「ねぇ、お姉ちゃんこのあたりで何か変なモノ見なかった?」
…ねえちゃんの遺した最後の希望…
それを抱いて踞るあたしにそう背後から声を掛けて来たのは、黒い短髪の可愛らしい少年(こども)の姿をした魔性の存在だった…
神話の始まり―3―
…そいつが一体何者なのか…
…何が目的で此処に在るのか…
大凡の所は見当がついていた…
…でも確信があったわけでは無かった…
…もしかしたら違う目的で来て偶々現在この時この場所に来てしまったのかもしれないとも思った…
…もしもその場合は悟られてはいけないと思った…
…あたしが何者なのかを…
…あたしがねえちゃん…
…否スーフィードから預かった存在の事を…
…けして気付かれてはならないと…
…でもこいつの様子から十中八九こいつの狙いは『魔王』との戦いで弱った『竜神』…
…つまりはまだ気付かれてはいないのだ…
…あの事には…
…だがそれでもまだ確証がない…
…だからあたしはカマを掛けてみる…
…それはあたしにとっても危険な賭…
…でも…
…こいつがあたしの思っている通りの相手なら…
…これしか方法がないから…
…あの事を悟られない様にこの場を切り抜ける手段が現在はこれしかないから…
…だから…
―続く―