―カツン…カツン…カツン…
 回廊に足音が響く…
 燭台の灯りに照らされた…薄暗い廊下を歩くのは千年伯爵…
 長い廊下の奥に存在する…重厚な扉にゆっくりと伯爵は手を伸ばす…

 ―開かれた扉の向こうには…典雅な庭園を持つ壮麗な白亜の宮殿…

 其処に住まう住人達に会う為に…千年伯爵は扉を開いた…


 
―白き『ノア』―
         ―1―
 


 「ノア様っ!ノーブルのお嬢様!大変にございます」
 そう唐突に扉が開かれ…メイドが告げる…
 その部屋は『子供部屋』…大きくて豪奢なベッドは不釣り合いではあるが…揺り椅子に木馬…大小様々な大きさの人形やぬいぐるみの数々…可愛らしいクッション…たくさんのおもちゃ…窓には柔らかい色調のカーテン…タンスの中には男物の子供服…テーブルの上にはたくさんのお菓子や果物が入ったバスケット…
 子供が喜びそうな物を…これでもかと集めたその部屋にいるのは二十台後半ほどに見える白髪の髪に赤い瞳…透き通るような白い肌を持った…白いドレスを纏った美しい女性…
 「…何用です?この部屋には近付くなと伝えておいた筈ですが?」
 女性は険しい顔でメイドを一瞥しそう言う。
 「…も…申し訳ありません…ですが…千年伯爵様が…」
 女主人の怒りにガタガタと震えながらも…メイドは用件を告げる…
 「?千年公がどうかなさったの?」
 メイドの言葉を最後まで聞かず…女性は怪訝な顔をする…
 「…あ…あの…」
 ガクガクとメイドは更に震え…それでも口を開こうとしたその時…
 「もう良いですヨv下がって他の者達も連れて来て準備を始めなさイv」
 そう言って千年伯爵がその場に姿を現す…
 「千年公…どうなさったのですか…?…確か新しい方舟を造られるとかでお忙しかったのでは?」
 『当分は忙しくなるから来られない』と聞いていた相手の突然の訪問に女性は驚き問い掛ける…
 「お久し振りでスvノーブル五世(ファイブ)レディーアンナv方舟の件はもう終わりましタv残念ながら結局は奴らに奪われてしまい…卵も奴らの手に渡ってしまいましタ…いまルル・ベルが『教団』に潜入しに行ってくれていまスv」
 にこやかに伯爵は女性…アンナに挨拶をし…そして僅かに表情を曇らせ残念そうに言う…
 「まあ!なんという事でしょう…ですが千年公それなら尚更お忙しいのでは…?…」
 伯爵の言葉に…アンナは驚きを露わにしつつも…更に伯爵の来訪が解らず疑問を抱く…
 「…エエv…ですからすぐに戻りまスvですがどうかレディーにもご一緒願いたいのでスv」
 にこりと微笑い伯爵が告げる。
 「……私も?千年公?どう言うことですの?」
 ここ二十年程はこの宮殿のある『ノアの聖域』から出ていないためアンナは伯爵の言葉に疑問を持つ…
 「喜んで下さイvレディーアンナv『あの子』が見付かりましタv」
 そうにっこり微笑って伯爵が告げた。

                                       ―続く―
  
 ―あとがき―
 どうも皆様RINです。
 この話は『ノーブル・ノア』の外伝で、同じ外伝の『ミッシングチャイルドの行方』のその後に当たります…
 …構想はかなり以前からあったのですが…ネタバレのオンパレードなのでUPを控えておりました…
 …本当は本編で方舟編以降の『あるエピソード』を書いてからUPしたかったのですが…本編の制作が難航し皆様方をお待たせしたいる上に…件のエピソードをどこに入れるかで少し悩んでいるので…下手したら当分UPできないことになりそうなので…開き直ってUPすることに決めました…

 ちなみにこの第1話は、以前ブログで抜粋形式で本文部のみUP致しました。
 
                                  ―それではまたの機会に―RIN―