ヴィーン!!ヴィーン!!
 …何処からともなく響くその『音』に、その日楊ゼンは叩き起こされた…
 

 
…そして再び…―1―


 「…な…なんなんですか…この音…」
 あまりのやかましさに顔を秀麗なその顔を顰めながら、楊ゼンは執務室へと急いでいた。
 「あっ!楊ゼン!」
 「太乙様、この『音』のことでいらしたのですか?」
 背後からの声に楊ゼンが振り向くと、其処には元崑崙12仙の一人、太乙真人がいた。
 「はっ!まさか!?太乙様『また』なにか変な実験をしたのでは…」
 「ちっ!違うよ!今回は私は何もしてない!ここ最近はずっとこの蓬莱島の地下都市の研究で忙しかったんだからっ!」
 ジト目で太乙真人を睨む楊ゼン、そしてそれに対し大慌てで太乙は両手を振って否定の意を示す。
 「…ホントですか…その調査の時になにかしたんじゃ…」
 「…しっ!してない!してない!前にあんな事件(こと)があったから、その辺りは充分注意してるんだ…信用してよ…」
 …なおも疑り深く詰め寄る楊ゼンに、太乙は調査時には細心の注意を払っていると告げる…
 …ちなみに以前の『事件』というのは、以前太乙が蓬莱島の調査目的で造った宝貝の暴走で起こった事件のことで…その時は…始祖として『完全な復活』を果たして以降仙道達の前に姿を現すことのなかった、『伏羲』とその『友人』を名乗る『存在』の御陰で事なきを得ていた…
 …そして…この時二人?は『今回は特別だ』といい…今後問題が起こった時、自分達の存在を期待しても無駄だと、きっぱり言っている。
 …つまり始祖の助けは期待できないのだ。
 「………まあいいでしょう…ここで話していても仕方ないですし…執務室に行きましょう、燃燈様や張奎くんも来てるでしょうし」
 嘆息を吐いて、そう言うと楊ゼンはスタスタと執務室へ向かって歩いていった…
 「…ヤレヤレ…あの様子じゃまだ疑ってるみたいだね…」
 そう太乙は頭を掻きながら、溜め息混じりに呟き…そして楊ゼンの後を追って行った…

                                     ―続く―

 ―あとがき―
 皆様、お久し振りです、申し訳ありません、RINです。
 ようやく、久方ぶりに封神が書けました。
 このエピソードでは、この『槃瓠のユメ』シリーズ上での始祖の秘密や世界の秘密について書いていこうと思います。
 さて、作中において、伏羲の『完全な復活』という言葉が出ておりますが、これは実は、WJ封神のコミックスのエピソード以降の話のまだHP上にUPしていない別エピソードでのことです。(つまりこのシリーズ中の捏造設定においては、伏羲はあの状態で不完全だったと…ちなみにだからと言って別に外見のことではありません、グレイになったりしません、基本的には太公望と対して変わらない『あの姿』のままです)話の位置づけとしては『斉』の次くらいにきます。
 それと同じく作中において、太乙が起こした『以前の事件』というのがありますが、これは、実は以前企画で途中まで書いて、企画終了後連載を通常に切り替えた途端、話が止まってしまったものの事です。随分長いこと止まっていますが、いつか必ず復活させます。(…ちなみにタイトルは『ラビリンス』複合企画においてある、隠し小説です)

                          ―それではまたの機会に―RIN―