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 「…王女からの書状ですって?」
 …青年の言葉に眉を寄せながらあたしはそれを受け取る…
 …誰からだろう?
 …渡された封書には『リナ=インバース様へ』と書かれているのみで…
 …他には特に何も書かれていなくて…
 …ただ…見覚えのない…でも何処かで見た様な…不可思議な既視感を覚える紋章が押印されているのみで…
 …封を開ける前に…暫し考える…
 …あたしには『王女』と呼ばれる知り合いは何人かいる…
 …この手紙の差出人が『彼女達』の誰かであったとして…
 …でもその紋章は『彼女達』の家の紋章では無い…
 …だが…恐らくはそれに類する…手紙の差出人の『王女』に関係するモノなのだろう…
 …差出人は…『彼女達』の中の誰なのか?
 …しかしその誰もが凡そ『手紙を使者に持たせる』等しそうに無い…
 …何故ならあたしが旅の魔道士だから…
 …何処にいるのか解らない旅の魔道士に連絡を取るのなら、最も手っ取り早いのは、魔道士協会に頼む事…
 …偶々あたしの居場所が分かって、それがすぐ近くだとしても…
 …やはり『手紙』を使うのは何処か奇妙しい…
 …寄越した『使者』にあたしを呼んで来る様に言えば良いのだから…
 …尤も…あたしが現在いるのは『使者』を寄越すには不適当な…決して近いとは言えない場所…
 …そんなあたしに『使者』を寄越すなんて…
 …そんな事をする人物に…実は心当たりが無いこともない…
 …でも…その相手だって…大抵は『こんな形式(かたち)』では連絡を取って来ない…
 …それに…出来れば違っていて欲しい…
 
 …そう願いながら…あたしは…封を開いた…
  

 
召喚―1―


 ―最近嫌な夢を見る…
 
 …目が覚めて…安心する…夢で良かったと…

 …でも同時に不安が過ぎる…
 
 …いつまで…と…

 …あいつと繰り広げる食事の争奪戦…

 …おせじにも上品なとはとても言えない…けれどとても楽しいこの食事…

 …あいつと一緒だと落ち着いてなんて食えないけど…

 …楽しくてとても飯が美味い… 

 …いつの間にか当たり前みたいになっていた…この時間…

 …それが失われるかも知れないなんて…
 
 …あいつの『あの言葉』を聞くまで思いもしなかった…

 …いや…正直ずっと不安はあったけど…

 …オレはバカだから…

 …すっかり忘れて期待していた…

 …一度…いや正確には二度…覚悟したあいつとの別離れ…

 …でも…過去二度訪れたその『別離れの機会』は…

 …あいつの『あっさりとした一言』で遠ざかり…

 …そして…
 
 …オレは…最初あいつの『あの言葉』を聞いた時…

 …嬉しかった…バカだから…

 …すぐに気付けなかった…

 …その事に…
 
 …気付いたのは全然別の…自分にとって都合の良い事だけで…

 …だからあの時『オレがあいつに言った言葉』を聞いた時の『あいつの複雑そうな表情(かお)』を見て…

 …そうして…また…少し不安になった…

 …尤も…この頃は…まだ漠然としたモノで…自覚なんかろくに無かったんだが…

 …だが…

 …ミリーナの件があってから漠然とした不安は僅かに大きくなり…

 …ルークの件があってからそれは更に大きくなり…流石のオレも自覚する様になった…

 …そんなある日…

 …起こったとある事件をきっかけに…

 …オレはその夢を見る様になった…

 …そしてオレは完全に自覚した…

 …その不安を…

 …そうして…その不安が…

 …ある日オレに『その言葉』を言わせた…

 ―「…今年も後もう少しだな~リナ…」―

 …それは…それだけならなんて事も無い言葉だった…

 …でも…

 …オレの心の中で…言えずに続けられた…『その言葉』が問題だった…

 …言っていれば良かったのか…言わなければ良かったのか…

 …だが…その時のオレには解らなかったから…

 …そのすぐ後に…
 …待っているモノの事を…
 …やってくるモノの事を…
 …知らなかったから…

                                  ―続く― 

 ―あとがき―

 …遅くなりましたが…明けましておめでとうございます<(_ _)>
 こんばんは、RINです。
 …諸般の事情により遅くなってしまいました…申し訳ありません<(_ _)>
 …次回はもう少し早めにと思っております。
 
                   ―それではまたの機会に―RIN―