…カチャ…カチャ…
 「…マナ…後もうちょっとでバージョンアップが終わるからね…」
 …白髪の少年が手元の『何か』恐らくは機械だろうと思われるをいじりながら…すぐ傍の人型の『何か』に話しかける…
 「…アレン…」
 …そしてその『何か』はそう少年の名を呼んだ…愛しむ様に…すまなそうに…
 「…もうちょっとで…一緒に町を歩けるようになるよ…マナ…」
 「…アレン…無理は…」
 「…無理なんかじゃないよ…僕がしたくてやっているんだ…マナ…」
 …無理はするなと…そう言おうとしたマナと言葉を遮って…僕は作業に没頭した…


 
旅路の始まり―序― 


 「アレンさまー!」
 …着物姿の女性が少年の名を呼びながら彼の『研究室』に入って来た…
 「なんの用ですか?サチコさん、珍しいですね、貴女方改造アクマがこの『研究室』に来るなんて…もしかして師匠が何か?」
 少年…アレンは…カチャカチャと動かしていた手を止めて、作業を中断して振り向きそう問い掛ける…尤も…殆ど確信しているのだけれど…
 「そうっちょ!マリアンがアレン様を呼んでるっちょ!」
 「…そうですか…有り難うご苦労様ですサチコさん…」
 そう言ってサチコと言う名の日本人女性の姿をした改造アクマに笑いかけると…
 「…やれやれ…まったく師匠はいつも唐突なんだから…まあ…後はここの回路を変更したら終わりですしね…」
 …嘆息混じりにそう言いながら取り敢えず作業を終えるべく手を動かす…
 …カチャ…カチャ…カタン…
 「…よし…バージョンアップ完了…マナ…たぶん師匠のことだから当分忙しくなるだろうし…いつになるか判らないけど…時間が出来たらデータ取りと微調整して…それが済んだらまた前みたいに一緒に出掛けようね」
 「…アレン…そうだな…」
 「じゃあマナそのボディから出て、いまはまだコアだけの方が良いからね」
 「…分かった…」
 アレンの言葉に『マナ』がそう返事を返した直後…
 …ヴン!
 そんな音を発てて小さな漆黒のゴーレム…(…アレンの師であるクロスのゴーレム『ティムキャンピー』に酷似した『ソレ』…)…が人型の『ボディ』の頭頂部にある『六芒星』上部に出現した…
 それを見てアレンはにっこりと嬉しそうに笑うと立ち上がり…
 「じゃあ行こう!マナ!師匠が待ってる!」
 …そう言って漆黒のゴーレムを伴いアレンは『研究室』を後にした…

                                            ―続く―