…窓の傍で…グラス片手に遠くを見る師の後ろ姿…
…その背中に声を掛ける…とっくに自分が来たことに気付いているだろう…師に…
…パオ〜ン…どこからともなく象の声…
…ここはインド…
…そして世話になっているのは…例に漏れず…師の愛人宅…
旅路の始まり―1―
「アレン使いに行け」
…そう言ってクロスはアレンに何かのファイルを渡す…
「使い…ですか?」
受け取りながらアレンが聞く。
「そうだ、行き先はその中に書いてある、マナがいるんだから迷子にもならんだろう…ついでに道中で面白そうな奇怪やアクマに出くわしたら、適当に調査して対処しとけ、いいな」
「解りました、じゃあ行って……あっ!そうだ師匠これ…」
頷いて、出て行きかけて…それからアレンは何かに思い至った様に、立ち止まり懐を探り、『何か』を出す…
「アクマの殺人衝動プログラムの、抑制用試作プログラムのバージョンアップ用プログラムです、何体かにアップデートしてデータとってみてくださいね」
「ああ、『方舟』の『研究室』使うぞ」
「わざわざどうしたんです?『あそこ』は師匠が自由に使ってくださいっていつも言ってるじゃないですか…」
『方舟』は『ノアの方舟』を真似て創った『アレン』の専用の場所だ…そこにアレンはプライベートな部屋や研究施設などを持っている。
その内の一つを師であるクロスの専用に、一つを共同研究用施設にとし、アレンはその2箇所へクロスが自由に出入り出来るように専用の『鍵』を渡しているのだった。
「…クッ…ちょっとな…伯爵が知ったらどう思うかとな…」
普段平然と自由に使っているクロスの言葉にアレンが疑問を返すと…ニヤリとシニカルな笑みを浮かべ、クロスはそう言い…
「……ああ…なるほど…いやがらせとしては…うーん…でもまた鬱陶しくなりそうですね…やっぱり止めておきます…」
…僅かに考え…そう言い…
「…じゃあ…師匠…行ってきます」
言ってアレンは一礼した。
―続く―