「……フン…帰ってきたのか…」
忌々しげに僕を睨み据えて僕達兄弟の『父』が言う。
…ハッキリ言ってまったく尊敬できない『父』だ…だがそれでも『父』は『父』…そう思って…
「…お久し振りです父上。お元気そうでなによりにございます」
そう言って礼をすると…
ジロリと上から下へと観察するように睨め付けられ…
「…フン…相変わらず礼儀作法だけは完璧か…まあお前は『跡取り』として育てたのだから当然だが…しかしよくもその期待を裏切ってくれて…そんなお前が…」
ブツブツと父が憎々しげに僕を睨み付けながらその不満を口にしていた時…
「兄さんっ!!」
歓喜に満ちた『その声』と共に、ドタバタと駆けてくる靴の音がし…
「ロ…」
弟の名を呼ぼうとした僕の声を遮って…
「ロビンッ!あれ程邸の中を走るなと言っているだろうがっ!」
振り向いた父が険しい表情で弟を厳しく叱りつけた。
―『誕生(はじまり)』の『瞬間(とき)』―
―3―
「……申し訳ありません。父上…」
父に怒鳴られたロビンはそう言うと一礼した。
「……ロビン!頭を下げすぎだ!角度に注意しろ!あまり低く下げると舐められるぞ!『ウォーカー家』の『当主』であると言う『自覚』を常に持て!」
礼をしたロビンを、『自分』の時同様上から下へと睨め付けるように観察すると、父はそう厳しくロビンを叱りつける。
そしてその瞬間ロビンの肩がビクリと震える…
…悔しいのだろう…弟は…
「…お前はもうすぐ『父親』にもなるのだ。その『自覚』も持つのだ。いいな!」
そう言うと『父』はその場からさっさと歩き去っていった。
…弟は未だ俯いている。
「……ロビン…」
そんな弟を慰めようと声を掛けようとした時…
「…くそっ!あのくそ親父っ!オレはテメェの道具じゃねぇ!」
小さな声で…けれど弟は確かにそう言った…
―続く―