「…それもね…心音の感じからいって…どうも男の子と女の子の双子みたいなの…男の子も女の子もどっちもだなんて…素敵ねvきっと神様からの祝福だわv」
 そう言って微笑んだ妻はとても嬉しそうで…
 その言葉を聞いたオレもとても嬉しくて…
 「すごいやっ!キミは最高だっ!双子だなんて双子だなんて…双子は世界で一番素晴らしいんだっ!」
 …『双子』はオレにとって最高に特別で素敵な『関係(モノ)』だったから…
 …だからそう言ってオレは彼女を抱き締めた。

 「相変わらずねvもうっ…私妬けちゃうわvあなたったら…」
 そんなオレを…彼女は呆れたように…くすくすと笑う…

 ―この時は確かにオレだけでなく…間違いなく彼女も…望んでいた…

 …息子と娘の誕生を…その健やかな生と幸福を…

 ―だけどオレ達が気付かなかっただけで…この『幸福』の『終焉(終わり)』は確かに刻一刻と近付いて来ていたのだった…
 

 ―『誕生(はじまり)』の『瞬間(とき)』―
                      ―2―


 「それでね兄さん!」
 目の前で弟がとても嬉しそうに笑ってる。
 父の命で、この子が見合いして結婚した時正直寂しかったし…父を多少恨みもした…けれど…

 ―いま弟はとても幸せそうで、嬉しそうで…それもその筈…だって…

 「子供が出来たんだっ!オレと彼女にっ!それが聞いてよ!双子なんだっ!」
 数ヶ月前に弟はそう言って電話を掛けてきた。
 …とても興奮していて…嬉しそうで…

 「…あっ…あなたっ…そんな…まだはっきり…」 
 電話の向こうから…少しだけ漏れ聞こえたのは…恥ずかしそうな『彼女』の声…

 「ねぇ!兄さん今度はいつ帰って来るの?親父なんか気にせずにさー!早く帰ってきてよ!親父と兄さんが仲悪いのは知ってけどオレに子供ができたんだ。兄さんが帰って来るには充分な理由だろ?親父に文句は言わせないっ!『ウォーカー家』の今の当主はオレだっ!」
 そう言った弟の言葉で…弟が電話を掛けてきた本当の理由を知った。

 …気付いていたのだ…弟は…全てではないかも知れないけれど…

 ―『遊学の為』…そう言う『理由』で家を出ていた…

 …けれど実際は…
 父に…『追い出された』のだ…由緒正しい『ウォーカー家』の『跡取り』として『不適格』として…

 ―そうして僕は帰ってきた…『最愛の弟』がいるこの『邸』に…

                                       ―続く―