「…愛しています………だからどうか逃げて下さい…」
…愛しい『彼女』の腕を掴み『私』は言った…
「…私もよ…」
…『彼女』はにっこり微笑って…
「…でもそのお願いはきけない…二人に守られて…二人をおいて…私だけ逃げるわけにはいかない」
…でもきっぱりとそう言った。
「…私とあいつはまだいい!掴まったってたかが知れてる…でもっ!貴女はっ!あいつらが貴女に何をするかっ!」
…最愛の『彼女』に再び言う…『どうか逃げて』と…
「いや!二人とも逃げるつもりなんかないんでしょ!私を逃がして、逃がすために戦うつもりでしょ!二人が逃げないんだったら私も逃げない!一緒に戦う!いつだって!私達は三人一緒よっ!」
…鈍い癖に…こんな時ばっかり鋭い…どこまでも頑固な『最愛の女性(ひと)』の『言葉』に結局…自分は首を縦に振らざるをえなかった…
―…遠き日の想い…―
―3―
「…『あの時』…我輩が『彼女』を『説得』出来ていれば…『あんなこと』にはならなかったんでしょうカ…?v…」
…ゆっくりと目を開け…千年伯爵は…先程まで見ていた『夢』に想いを馳せ…
「…いまとなっては…それももう…わかりませんネェ…v…」
…嘆息を吐く…
…『あれ』は『あの時』の『必然』だったのかも知れない…
…結局…どう足掻いても…避けられなかったのかも知れない…
…どうして…『あんなこと』になったのか…
…自分の…自分達の『幸福』を『壊した』総てが『憎い』…
…いまとなっては『自分と彼女』の『友』であった『あの男』も…
…いや…
…最終的に『彼女』を『自分』から奪ったのは『あの男』…
…『あの男』こそがいまや最も『憎い』…
…だがもうその『あいつ』もいない…
…すべて7000年も昔のこと…
…そう思っていたのに…
…『あの男』はまだ『自分』を邪魔しようとする…
「…我輩はただ…『彼女』と幸せに暮らしたいだけなのニ…v…」
…もう二度と邪魔されたくないと…そう思っているだけなのに…
…『あの男』は…邪魔なモノを総て一掃してやろうと思った『自分』の『邪魔』をし…
…挙げ句…『彼女』と『自分』の間まで引き裂いた…
「…『彼女』と『お前』に『呪い』をかけた…この『呪い』がある限り『彼女』は二度と『お前』を愛しはしない…」
…『あの男』はそう言った…
「…『彼女』はもう二度と『お前』のために死んだりしない…」
…よくもいけしゃあしゃあと…
―ギリッ…
千年伯爵は歯ぎしりし…
…しかしすぐに…
…切なげな表情(かお)となり…
「…愛しい『女性(ひと)』…必ず生まれ変わった『貴女』を見付け…『呪い』を解いてみせまス…v…」
…視線を宙に彷徨わせ…そう言った。
―終わり―