ターニングポイント―1―

 「……よ、暫しそこで頭を冷やすがよい」
 永久氷壁に封じ込められた女にその男は冷ややかに告げて、そこから姿を消した。
 そして女は独りになった……
 
 …女が目覚めた時、其処には誰もいなかった…
 「…よくも…わらわを…よくも…」
 女は泣きながら剣を振るい…世界を壊した…
 世界を壊した女は涙を拭う。
 「わらわは諦めぬ…この地に故郷を取り戻そうぞ…」
 そう言うと女はそこを立ち去った。
 …女は気付かず立ち去った…
 「……よ、そのわがままは聞いてはやれぬ…」
 独り残った男は言った。
 
 「……様、…呂望様…」
 可愛らしい少女の声に呂望は目を覚まし、傍らの少女に問いかけた。
 「…どうかしたの馬氏?」
 呂望は不安そうに己を見る、紹介されたばかりの許嫁に起きあがって問うた。
 「うなされておいででしたので……」
 呂望は安心させるように穏やかに微笑みながら言った。
 「…大丈夫、夢を見ただけだから…それよりも何か用が有って来たんじゃないのかい?」
 「…これから、邑に帰りますのでご挨拶をと思いまして…」
 「そう…気をつけて帰るんだよ…」
 呂望のその言葉に馬氏は頷いて去って行った。
 馬氏が去って、その場に誰もいなくなると呂望は小さく呟いた。
 ―さよなら―と……
 
 そして十日後、父母と共に邑に帰り着いた馬氏は、早馬の報せを受けた父母から知らされる、呂の邑の悲報を……       
 
 あとがき:呂望は直頭領だったんですから許嫁ぐらい居ても良いだろうと思い書きました。馬氏は小説版(講談社)の姜子牙の奥さん、でも全然性格違うし……(-_-;)
 宋異人も出したかったな〜(わかんない人ご免なさい……)