ターニングポイント―2―

 ―こやつは呂望、おぬしとは同期ということになる、共に修行に励むが良い―
 初めて望ちゃんに会った時、原始天尊様は言った。
 普通師匠が同じなら修行の内容は個人差はあってもそれほど差異はない、でも望ちゃんの修行は一緒にやってる筈なのに全然違う様な気がしていた……
 
 「ねぇ望ちゃん……」
 望ちゃんはいつも通り、怠けているふりをしている。
 「うーなんじゃ……」
 眠そうにしながら寝返りをうつ。
 ねえ、僕は君が休んでる所を見たことないよ。
 「時々、ほんの一瞬だけど原始天尊様がすごく望ちゃんの事苦しそうに見てることがあるよ」
 「おぬしの気のせいではないのか?」
 「違うよ、望ちゃんだってホントは気付いてるんでしょ」
 「……原始天尊様はおそらくわしのこの身を哀れんでおられるのだろう……」
 望ちゃんの声が低い、僕は望ちゃんが何を言いたいのか直ぐに気が付いた。
 「ご、ごめん望ちゃん、僕そんなつもりじゃ……」
 望ちゃんの肩が震えてる……
 「望ちゃん……」
 「くくく、ダーハッハッハ」
 望ちゃんが笑い転げてる……
 「普賢、おぬしは色々と細かいことを気にしすぎじゃ、だからこんな手にひっかかるのじゃよ」
 「ひ、非道いよ望ちゃん……」
 望ちゃんと一緒に僕も笑った、通りかかった太乙が、僕らが雲中子に何かされたんじゃないのかって本気で心配するぐらい……
 
 ねぇ望ちゃん……僕は君が大好きだよ……
 ……僕が勝手に好きなんだ、僕が勝手にそれをするんだ……
 …だから…一人で背負わないで……
 
 「普賢、ここにおったのか……」
 振り向くとそこに望ちゃんがいる……
 「望ちゃん……」
 僕たちはいつも一緒だった……
 「その……今日はな……」
 でもそれも今日で終わり……
 「封神計画……がんばってね……」
 ホントは僕も行きたい……
 「……うむ……行って来るよ……」
 そう言って望ちゃんは玉虚宮に向かった……
 僕は行ってらっしゃいって言えなかった…… 
 
 あとがき:封神計画直前の普賢です、一人で色々と思い出してます。