―…スーマンを殺したあの『蝶』が…
 …僕の心臓に穴を開けたあの『蝶』が…

 …リナリーの傍を飛ぶ…

 …それを目にした瞬間…

 …『…ユルサナイ…』…

 …僕は…なにか言い知れない…
 …僕自身にも…説明も…制御も出来ない…その感情の存在を知った…

 …それは…それまで…不思議な程に感じなかった…
 
 …ノアに対する…

 …怒りにも似た…激情…

 …『ソレ』だけはさせない…『僕』の『仲間』に『手』を出すな!…
 …必要なら殺してでも…止める…
 
 …僕の内から…そんな『コエ』が聞こえた気がした…

 
 
岐路(わかれ)への道程(みち)―6―


 …信じていて…
 …きっと守ってみせるから…
 …きっと…勝ってみせるから…

 …『…もう…二度と…あんな…』…
 …一瞬…そんな『コエ』と…ともに…
 …なにか…途方もなく不吉な…場面が…刹那脳裏を過ぎる…
 …まるで…フラッシュバックかなにかのように…

 …でも…それもすぐに…霧散する…

 …そして…僕は…選ぶ…

 …戦うことを…

 …それでも…僕は…

 …誰にも死んで欲しくない…

 …誰も死なせたくない…

 …不思議な程にこわくない…

 …目の前のノアも…

 …その…イノセンス破壊の『力』も…

 …そして…僕自身に…降りかかるかもしれない『死』も…

 …僕が恐れるのは…そんな『モノ』じゃない…

 …だから…逃げない…僕は…

 …いま…僕が逃げたら…『ソレ』は容易に訪れる…

 …そんな気がするから…

 …その『最悪』を防げるのなら…
 …僕は構わない…
 …どうなっても…

 …それがたとえどれ程異常な『力』でも…
 …僕はその『力』を使おう…

 …たとえそれが『人』の身に過ぎた『力』でも…

 …僕は…

 …イノセンスよ…

 …クラウン・クラウンよ…

 …僕とお前は…

 …お前と僕は…

 …ほんとうは…

 ―『イノセンス・臨界突破!神の道化(クラウン・クラウン)発動!』―

 ―…そして…目覚める…その真の『力』…一端が…
 
                                            ―終わり―