「…当代『奥継』との連絡か…迂闊だったな…取る事叶う様ならば、そもそもこの様な事態に陥ってはおらなんだだろうに…」
 「…だが…」
 「……あやつらは知らぬ…まさか言うわけにもいくまい…当代『奥継』がおらぬなぞ…」


 
遺継―1―


 「…『火影』と『奥継』双方共におらぬなぞ…唯一の救いは…総領たる『遺継』の存在か…」
 「…少なくとも『あやつ』がおれば『三代目の葬儀』と『火影・継承の儀』は成り立つ…だが…」
 「…現在の様な状態の時に、このまま『奥継』がおらぬと言うのもあまりに拙い…」
 「…しかし…あやつは…恐らく『あの事件』のトラウマを未だ抱えておる…」
 「…宗主の役割をこなしながらも、いまだ宗主を…『奥継』『渦巻鳴門』の『銘』を継ごうとせぬがその証拠…」
 「…あやつは己を責めておる…『未熟者』だと…」
 「…『あの事件』の責は我らに…里にある…」
 「…そのことなら気にしなくていいよ…」
 不意に子供の声がその場に割り込んだ、それはホムラとコハルにとって良く知った子供の声だった。
 「…ナ…ユイ…いつのまに…」
 「…しかしユイ…」
 「…あれは…結局…俺と母様の未熟の結果だ…誰も悪くなんかないんだ…」
 「…ユイ…」
 「……おぬし…」
 「…まあ…それは兎も角さ…ホムラじいちゃん…コハルばあちゃん…ようやく決めた…継ぐよ『奥』を…正直まだ未熟だと思うけど…でも現状を考えればそれが一番いい…だから…正式に…襲名するよ…『奥門・深奥の庭杜』統主『奥継』の『銘』を『渦巻鳴門』の『隠し名』を…」
 「…ユイ…おぬし…」
 「よいのか?」
 「……うん…元々…やっぱり…俺が…俺の…甘えだったんだと思うから…」
 …そう言って俯くその姿は… 
 …年相応の…
 …否…実年齢よりさえ…推さなく見えた…

                                       ―続く―