―大きく豪奢な天蓋付きのベッドの周りに、ノアの一族の数名が集まっていた…
ベッドには一人の『少年』が眠っており…その枕元の左右に伯爵とロードが座り…哀しげな表情で…愛おしげにその顔や頭を撫で髪を梳き…レロがロードの隣で心配そうな様子でその顔を覗き込んでいた…
そして少し離れたベッドの脇には…驚いた表情のティキ・ミックやジャスデロとデビット…奇妙に複雑そうな顔のスキン・ボリックが…
ベッドで『眠る』…『少年』をジッと見つめていた…
―11年前の『奇怪』―
―10―
「?どうしたのぉ?千年公ぉ?」
ずっと自分と同じく、哀しげな表情で、けれど愛しげに…少しでも傷つき苦しむ『彼』を慰められたらと『少年』の頬や頭を撫でていた千年伯爵の手が止まったのを訝しく思いロードが顔を上げてそう問う。
顔を上げたロードが見たのは…険しい表情(かお)の千年伯爵…
「…クロスッ…」
伯爵はボソリと…けれど忌々しげに呟くと…
「『アレン』ッ!『アレン』ッ!すぐに起きて下さイv!すぐニッ…!v…」
焦りを含んだ声で…ベッドに『眠る』白い髪の『少年』に呼び掛ける。
「一体どうしたのぉ?千年公ぉ?『夢』の『能力(ちから)』を使ってる『時』の『アレン』は簡単には起きないって知ってるでしょぉ?」
伯爵の様子に尋常でないものを感じそうロードが問い掛けると…
「…そっ…それはそうですガッ…このままでは大変なのでス…アレンの心がかなり揺れてるみたいですシ…しかも寄りにも寄ってそんな時に『あの男』がっ…クロスがアレンの前に現れてしまったのでス!v」
大慌てで捲し立てる伯爵の様子に…
「…クロスって…そんなに『アレン』に『親い』の?」
物凄く不満そうにロードが問うと…
「…ええ…まあ…我輩達ほどではありませんがネ…」
そう伯爵も不満そうに告げ…
「…けれど『あの男』は紛れもなく『アレン』の『特別』なのでス…」
忌々しげに言うと…
「………………」
僅かな沈黙の後に…
「…ロード…アレンを起こして来て下さイv」
伯爵はロードに、常よりも僅かに低い声で、そう告げた…
―続く―