―…懐かしい声…

 「…なにが嘘だ馬鹿弟子が…」
 「…師匠…」
 …恐る恐る振り返った其処にいたその人の姿に…

 …全く別の理由で…涙が出そうになった…


 
―11年前の『奇怪』―
              ―9―
 


 「…よう…久し振りだなアレン」
 そう言って師匠がこちらに来る…
 …どうしよう…僕は…
 「…師匠…僕は…」
 …思い出してしまったんです…
 「さっさと立て、お前に仕事があるんだ」
 すぐ傍まで来ても、座り込んだままの僕に、師匠が言う…
 …仕事?…なんのことだろう…?…
 …師匠の任務と関係あるのかな…?…それともそれ以外で…?…
 …でも…どちらにせよ…
 「…師匠…無理です…」
 …僕は…僕には…もう…
 「…何が無理だ。つべこべ言わずにさっさと立て…」
 そう言っても…師匠は無理に立たそうとはしない…
 僕が自分から立つのを…立てるようになるのを…まるで待ってくれてるみたいだ…
 …まあ…実際待ってくれてるんだと思う…師匠は感がいいから…
 しかも実はまったく他人を気にしないように見えて、結構気配りが利く…そういう人だから…
 マナのお墓の前で泣いてる僕の様子に…たぶん何かを感じ…師匠なりに気を遣ってくれているんだろう…

 …ああ…どうしていまあなたに会ってしまったのか…
 …思い出す前だったら良かった…
 そうしたら僕は…嫌な顔をしながらも…あなたの言葉に従えた…

 …でもいま僕は迷ってる…迷ったってどうにもならないのに…
 …どっちも大切だから…戦って欲しくない…
 …そんなことを言ってもきっと『彼ら』は止まらない…
 …止めたければ…『あの方法』しかないけど…
 …きっと『それ』は…『彼ら』に受け入れられないし…
 …そうなれば…『僕』は…

 …きっと耐えられない…

 ―…それなら…結局『僕』が『逃げる』しかない…そうすれば少しは遅らせることができるから…

 …だから…
 「僕はノアなんですっ…」
 …いま…あなたと一緒にいけない…
 「…なんだと…誰がそんなことをお前に言った」
 僕の言葉に師匠が僅かに目を瞠る。
 「…思い…出したんです…マナが…封じていた…昔の…千年公達といた頃の…記憶を…」
 …思い出してしまったんです…とそう告げて…
 「…僕は…ノアなんです…」
 もう一度…そう言った… 

                                            ―続く―

 ―後書き―
 どうもいつも読んで下さって有り難うございます、RINです。
 次回『第10話』はエクソシストサイドである『11年前の『奇怪』』の中にあって『異色』の内容となります。
 どう『異色』なのかと申しますと、次回だけは完璧にノアサイドの話になるからです。
 「え?なんでここでノアの話になるの?アレンくんと師匠の話は?」皆様きっとそう思われるでしょう…
 次回の『第10話』は、仮タイトルだけ発表済みのノアサイドエピソードとリンクしています。
 「リンクしているノアサイドの話が別にあるんなら、必要ないんじゃ…」と思われる方もおられるでしょう…
 …でもそれだと『その部分』が入荷されるまで長らく皆様をお待たせすることになるので…書いたがばっかりに余計『謎』が増えること請け合いではありますが…敢えて書きます。
 
 ―そんなわけで次回はノアサイド。アレンの『能力』についてホンのチョッピシだけ触れます…

                             ―それではまたの機会に―RIN―