―墓の前で泣くアレンの姿に嫌な予感がますます強くなった…

 …そう思っていたら…

 「僕はノアなんですっ…」

 ―アレンがとんでもないことを口走り…

 ―『伯爵と暮らしていた頃のことを、すべて思い出した』と…そう言った…
  

 
―11年前の『奇怪』―
              ―11―
 


 「…そうか…思い出したのか…」
 僕の言葉に…遅かったかと…師匠は微かな溜め息と共に小さく漏らし…
 「…まあいい…思い出しちまったもんはしょうがねェ…今更どうにもできんからな…マナの苦労が全部台無しになっちまったのはまああれだが…アレン…『お前』はもうガキの頃とは違うだろう」
 …『昔の様に人間を憎んじゃいないだろう』と師匠は言った…
 その師匠の言葉に…僕は…なんと答えるべきか…迷った…
 …だって…師匠の言葉は確かにその通りで…
 …でも…でも…僕は…っ…
 …『僕が逃げる』為には…『教団側(みんな)』に対しては…『人間』への『憎しみ』を『忘れられない』と…そうしておいた方がいいに決まっている…
 …でも…
 「…そりゃ…まあ…そうですが…」
 迷った末に…僕は…そう言っていた…
 …だって…師匠を騙せるわけがないから…
 …でも…
 「…でも…僕は『ノア』なんです…」
 …『僕』が『ノア』だということは…『真実(ほんとう)』…
 「…だから僕は…ノアと…千年公と戦えない…」
 …『彼ら』が愛しい…『彼ら』に傷ついて欲しくない…
 …でも…『みんな』が…教団の仲間達が…『大切』で…
 …だから…『彼ら』にも…傷ついて欲しくない…

 …それなら…どうすればいいのか…『僕』は知ってる…
 …この『戦争』を終わらせる『方法』を…

 …でも…
 …『それ』をしたら…

 …その『方法』を『みんな』が知った時の…『反応』が…僕はコワイ… 

 …『僕』が『戦う』ことを選んだら…『その時』は…

 …きっと…ゼンブ…知られてしまう…『みんな』に…

 …『それ』が…『僕』は『コワイ』…

 …恐いんです…

 …だから…
 「…僕はっ…もう…戦えないんですっ…」
 …どうしたらいいですか…?…

 …師匠…

 ―僕の瞳から…涙が溢れた…

                                            ―続く―