「…フン…仕方ねェから…当分は『元帥代理』の権限で俺が代わりをやっといてやるよ」
 そう言って俺は懐から『指輪』を取り出す…『イレギュラーズ統括者』の『証』である『指輪』…アレンの『指』にある『モノ』と限りなく『酷似』した『それ』を…
 「解ったらとっととその『指輪』外して『アレン・ウォーカー』になりやがれ」
 指にはめてアレンに告げた…


 
―『アレン・ウォーカー』の『旅立ち』―
                      ―5―
  


 「…フン…仕方ねェから…当分は『元帥代理』の権限で俺が代わりをやっといてやるよ」
 …なんか…とんでもないことを聞いたような…
 「解ったらとっととその『指輪』外して『アレン・ウォーカー』になりやがれ」
 …信じられない…師匠が…あの師匠が…
 「…師匠が自分から仕事をするって言ってる…」
 僕は目を見開いて思わずそう呟いていた。
 だってそれも絶対仕方ないんだ…だってそれは…大嫌いなデスクワーク…
 師匠が『あの指輪』を…『統括官代行』の『印章』としての『役割』をも果たす『それ』を身につける…そして『僕』が『指輪』を『外す』ということは…『事実上』師匠が…たとえ『代理』でも『イレギュラー元帥』になると言ってる様なものなんだから…
 …どうしよう…明日は…嵐いや…もしかして……
 そう考えていたら…
 「…アレン…お前良い度胸だ…」
 地の底から轟くような低い声…
 その声に…えっ…?…と思う…
 「…世界の終わりがなんだって…?…」
 口唇(くち)の片端を上げて師匠が言う…いつも以上に低い声で…
 …えっ…とー…
 「…師匠…読心術なんかできたんですか…?…」
 口から出たのは…何故か『言い訳』ではなく『素朴な疑問』…
 「…馬鹿が…口に出してなかったつもりだったのか…?…しっかり声になってたぞ…」
 僕の言葉に師匠は呆れたように肩を竦め…
 「…まあいい…アレン覚悟はいいな…」
 そう言って師匠が懐に再び手を入れ…取り出したのは…何故か一本の『金槌』…
 「…し…師匠…あの…まさか…」
 取り出した『金槌』を手に躙り寄ってくる師匠に…僕はそう言いつつ後退りし…
 「…くっくっくっ…アレン…」
 低い声で…どこか嬉しげに師匠が言いつつ僕の方へと躙り寄り…

 ―「目が覚めたら出発しろ」
 そう言って『金槌』を振り上げた…

                                       ―続く―