―「目が覚めたら出発しろ」―

 そう言ってクロス・マリアンは『金槌』を振り上げた…


 
―『アレン・ウォーカー』の『旅立ち』―
                      ―6―
 


 「………いっつー…酷い目に遭った…」
 そう呟いてアレンは頭を押さえ起きあがる。
 「…師匠は…いないのかな…?…」
 そう言ってキョロキョロと辺りを見回し…
 「それとも」と呟いて…そして暫し黙し…
 周囲をぐるりと一通り見渡した後…
 「…『聖母ノ柩(マリア)』で…隠れてるんですか…?…師匠…」
 そう呼び掛ける。
 勿論返答などあろう筈もなく…その場を支配するのはただ沈黙のみ…

 落ちた沈黙に…アレンはハアと嘆息し…
 「…まあ…解ってましたけど…」
 そう呟いて…そしてまた微かに溜め息を吐くと、今度はキッと顔を上げて左手を握り…
 「師匠ー!次ぎ会ったらその時はおぼえてろよー!」
 そう叫んで拳を力一杯振り上げた。

 ―そしてアレンは手早く荷造りを済ませると…
 「ティムキャンピー。いくぞ」
 そうティムキャンピーに声を掛け、歩き出す…

 一歩二歩と歩き…しかし不意にピタリと立ち止まり…
 「…行ってきます」
 そう一言呟いてまた歩き出し…そして部屋から出て行った。

 ―アレンが部屋から出て行って暫し後…誰もいない部屋にクツクツと愉しげな笑い声と共に紫煙を燻らせて、黒衣のドレスを纏った顔を包帯の様なモノを巻いて隠した女性と共に赤毛の神父・アレンの師、クロス・マリアンが何処からともなく姿を現した。
   
                                       ―続く―