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 「アクマが出てきた『あの時』…『あの時』アクマは『亡霊ちゃんはいないのね』そう言ったわ!」
 …だから…大丈夫だと…リナリーはトマに告げる。
 …あのアクマの言葉は…まだ人形は見付かっていないと言う意味だと…
 …そしてあのアクマはいま神田が相手をしているから…暫くは心配いらない…とそう続け…
 「…トマ…とにかくいまは人形とそしてアレンくんを捜しましょう!」
 …そう言ってリナリーはトマを促して駆け出した。 


 
…ディスティニー…
         ―マテール編―
               ―14―
 


 「…レディリナリー…貴女は本当に優しい女性(ひと)ですね…」
 …こんな…敵か味方かも解らない…会ったばかりの相手の心配なんて…

 ―『遠見の力』(遠く離れた所の様子を視る『力』…いわゆる千里眼能力…)でリナリーの様子を視ていたアレンから不意に微かに笑みが零れる…
 …それを見て…
 「アレン、あの子の事が気に入ったんだね」
 アレンの傍にいた黒いゴーレム…『マナ』が言う…
 「…マナ…うん…そうかも知れない…」
 …マナの方を見て…少し幼げな笑みを漏らす…
 …その様子には…先程までの…リナリーに対して向けていた紳士的な微笑みも…神田に対して向けていた敵愾心たっぷりの嘲笑混じりの表情も…そして…アクマに神田を襲うように命じた時のような昏さも無い。
 …他の人間には解らなくても微妙な雰囲気の違いがマナには解った…

 …恐らく『アレ』を見分ける事が出来るのは…自分とクロスの他にはロードと千年公だけだろうと思う…そうアレンの『素顔』を知っている『自分達』だけだろうと…)
 …先程までの『他人用』の『表情(かお)』ではない『笑み』に混じる『感情(もの)』を感じ取って…私はそれを嬉しく思う…
 …ゴーレムでさえなければ…自分もまた…笑みを漏らしていただろう…そう思い…
 「…友達に…なりたいんじゃないのかい?」
 …そう問い掛ける…
 「…マナ?」
 「…思えばお前には同じ年頃の友達がいなかったね…大道芸人の仲間達の中にも確かに子供がいたこともあるけど…みんな歳が離れていたから…」
 …私の言葉の感じに…『何か』を感じたのだろう…不思議そうに見つめてくるアレンに…ずっと気に掛かっていたことを言う…
 …学校に行かなくなって人間を極度に恐れるようになった…かっての幼いアレン…
 …手袋で『左手』を隠し…外へ連れだし…大道芸人の仲間達を紹介した…彼等は時に冷たい酷い扱いを受けることもあったし…中にはアレンの『左手』とは違うが、容姿の醜さや奇形であるために、まともな職に就けず、仕方なく『この道』を選んだ様な…わけ有りの者もいたし…なによりそれぞれに事情を持つ『大人』の『世界』だ。『左手』を隠していても深く追求したりはしなかった…
 …御陰でアレンは『左手』を隠していれば『人間』を恐れなくてもいいと知った…
 …だが…だからといってアレンが人間の学校に戻れるわけではない…『左手』を隠し続けるなんて真似が出来るのは、大道芸人だからこそ…
 …そして…アレンもそのことを解っていた…
 …万が一『腕』を見られても『言い訳』が通る職…それが『大道芸人』…だが『学校』という『場所』は違う…
 …以前学校に通いはじめるに当たって『昔、火傷をした痕』…などといった類の嘘の『理由』を作って手袋の使用許可を実は千年公は取っていた…
 …しかし『大人』である『教師』は兎も角…『子供』には通じず…かえって『えこ贔屓だ』と『子供』達にいじめられた…
 …自分の『左腕』が『他人』とは違うことは、解っていても…当時は『何も』理解していなかった「いじめられる」という言葉そのものさえ知らなかったアレンの心はずたずたに傷つき…一時は本当に『家族』とアクマ以外が傍によることは出来なかったのだ。
 …そんなアレンを…流石にこのままでは行けないと思い、少しずつ少しずつ『人間』に慣らしていった…
 …それでも…『人間』への恐怖心は消えても…徹底的な嫌悪と侮蔑の念は消えなかった…
 …だから私は『賭け』に出た。
 …あのあらゆる意味で普通の『人間』とは異なる『あいつ』なら…
 …一緒にいると『人間』だの『ノア』だの悩んでいるのが、馬鹿らしくなるような…『あの男』なら…いまの自分の『悩み』も吹き飛ばしてくれるかも知れない…
 …そう…アレンをあいつに会わせようと…
 …それは素晴らしいアイデアの様に思えた…ついでにイノセンスの使い方も、アレンに教えてやって欲しいと…そう頼むことにした…
 …おかげで…いまはアレンは『人間』を恐れないし、嫌いもしない…むしろ好意さえ持っている…
 …全部あいつ…クロスのおかげだと…思う…

 …尤も…多少…余計な影響も受けてしまった様だとも思っているが…

 …これに関してだけは…私も千年公と同意見だったりする…

 …ロードなどは結構喜んでいるが…あの子には被害が無いから…まあ…私も無いのだが…
 …だが…昔の…幼い頃の可愛らしいアレンを知っている、私と千年公は…どうしても…侘びしいものがある…
 …クロスの所為だけではないと言うのは…十分解ってはいるのだが…

 …ハア…

 …そうして…それでもアレンには同じ年頃の友達だけは、作る機会を与えてあげることが出来なかった…

 …そのことが…どうしても悔やまれてならなかった…

                                            ―続く―

 ―あとがき―
 どうも皆様、RINです。
 今回冒頭は、前回のララとグゾル逃亡エピソード終了を受けて、リナリーとトマに戻りました。
 …でも本文はアレンくんです。
 …と言うか!ようやく久し振りにアレンくんの登場です!
 今回と次回はアレンくんとマナの『親子愛』がテーマです。
 
 …そして『大道芸人』については…フィックションなので話半分でお願いします…
 …いえ…この話を書くにあたって、わざわざ調べ直したりはしてないと言うことです…
 …他のどこかで(…何かまじめな本だったのかも知れないし、漫画や小説だったのかも知れない…といういい加減な記憶なので…)大道芸人やジプシーとかが…時に迫害されたり差別されたり…と言うような話を見たような…
 …そういうわけなので…ちょっと根拠が…
 …でも手袋をしていても『大人』の『世界』なら、あまり追求されない…と言うのはあると思います…(…勿論状況にもよりますけど…)
 …Dグレの1巻で警部さんが、手を見せろと言ったのも、血がこびりついている可能性を疑っただけで、あれは至極当たり前の行動だと思います。
 …むしろその後『十字架』を見て説教をする警部さんはいい人だと思います(…だからお亡くなりになったことが悲しいです…)

                                  ―それではまたの機会に―RIN―