―『友達』…
…その存在をアレンに与えることが出来なかった…それをマナはずっと気にし続けていた…
…ディスティニー…
―マテール編―
―15―
「…友達に…なりたいんじゃないのかい?」
…マナのその言葉には…深い自嘲の念が感じられた…
「…マナ?」
…マナが『何を』気にしているのか…薄々なりとは感じてはいたが…
…次のマナの言葉でそれはより確かなものとなる…
「…思えばお前には同じ年頃の友達がいなかったね…大道芸人の仲間達の中にも確かに子供がいたこともあるけど…みんな歳が離れていたから…」
…大道芸人の仲間達…彼等とはそれなりに親しくしてはいたが、確かにマナが言う『友達』という『間柄』ではなかっただろう…
…でも自分は『友達』なんて特別に欲しいとは思わなかった…
…昔…学校に通っていた頃…その『学校のお友達』とやらから受けた手酷い仕打ち…それを引きずっているわけではなく…
…ただ自分には…『大切な人達』さえいればそれで良かった…
…それに第一…自分からその機会を奪った原因はマナではない…マナが責任を感じる理由などまるで無いのだ…
…だがそれを言えば…またマナを悲しませる…
…だから僕はこれ以上マナの悲しむ姿を見たくなくて…
…慌てて取り繕おうとして…
「マナ?なに言うの?そんなの気にしないでよっ!僕は全然気にしてないよっ!僕はっ!僕はマナと師匠とロードと千年公がいればそれでいいんだからっ!」
…勢い余って…つい『本音』を口にしていた…
…いまでは口にはしない…その本音を…
…そして…慌てるあまり…その事にすぐには気付けなかった…
「…有り難う…アレン…でも…ふふ…」
…だからマナがなにを笑っているのか最初は解らなかった…
「…?どうしたの?マナ?」
…可笑しそうに笑うマナに…元気になってくれたのは嬉しいけれど…その笑い方がどうも気になる…
「…アレン…さっき呼び方が『伯爵』から『千年公』に戻っていたよ?」
…そしてそのマナの言葉に僕は気が付く…
しまったっ!
…どこに『あの人』の『耳』があるか解らないんだから、いつもはもっと注意してるのにっ!
…迂闊だった…そう思う…
…心底焦り…混乱する…
「!ッ!なっ!内緒ッ!違う!間違いっ!僕は千年っ!伯爵なんか数に入れてないよっ!僕はあの人『嫌い』なんだからっ!当分許さないんだからっ!!」
…混乱して僕はそう一気に捲し立てる…
…そう…マナを殺したあの人なんか!大っ嫌いだっ!許さないったら!許さないっ!
「…くすくすくす…アレン…千年公はここにはいないんだしそんな慌てなくても…そりゃ聞かれたら、きっと千年公は大喜びで今すぐ帰って一緒にディナーを食べようとか言いそうだけど…」
…マナがなんだかますます嬉しそうだ…
…なんでだ?伯爵はマナを殺したのにっ!
…そして思わずマナの言葉から想像してしまう…大喜びで突然現れてハートマークを撒き散らしながら「さあ一緒に帰りましょウv一緒にディナーを食べましょウv」そう言う伯爵の姿…
…実際いますぐ出てきそうで恐い…嫌だ…
…ブルブルと頭を何度も振り…その想像を振り払い…
「!違うっ!違うったら!違うっ!内緒だし!一緒になんか帰らないし!ディナーは食べたいけど!でもっ!違う!間違い!僕の『特別』はマナと師匠とロードだけっ!だけったらだけっ!」
…これでもかと言う大声でそう叫ぶ…
「…ふふ…はいはい…解ったから…そろそろ落ち着こうね…アレン…」
…そんな僕をやっぱり何が嬉しいのか、随分と嬉しそうな様子でマナがにこやかに宥めた…
―続く―
―あとがき―
どうも皆様、RINです。
前回に引き続いて、連続UPであるにも関わらず後書き書いてます。
今回は前回のマナ視点に引き続き、アレン視点です。
前回でマナのアレンへの想いを、そして今回は…
…まあそれは本文をお読み頂けたなら既にお解りかと思います…
アレンとマナはお互いがとても大切です。他にも大切なものもありますが、それでも…アレンはマナが一番で、マナはアレンが一番…そういう関係です。
…そして実はマナは自分を殺した千年公のことを対して気にはしていません…殺されるだろうことを解っていた上でのことだったというのも理由の一つです…
…いずれその内どこかで…何故この話のマナがノアを裏切ったのか…を書くと思います…
…所詮お互いしか見えていない近視眼似た者親子のほのぼの『親子愛』いかがでしたでしょうか?
次回は今回の白アレンくんから一転、黒アレンくん…『悪魔の弟子』で『ノアの王子』な『アレン様』が再びお出ましに…って何故に敬語…
…その内『ノアの王子』についてもお話が進めばどこかで…『誰か』が説明します…
…それまではもう暫くお待ち下さい…
―それではまたの機会に―RIN―