…うっ…お…れ…は…まだ…死…ぬ…わ…け…に…は…

 …ともすれば薄れがちな…いや…もしかしたら…いくらかは気を失っていたのかも知れない…その意識の中で…俺は感じた…
 …トドメを刺すわけでもなく…自分を凝視するアクマの視線を…
 …なんだ?…な…ぜ…こいつは…俺にトドメを刺さない?
 …俺を殺したと思っているのか?
 …だがその割には様子が妙だ…一体…何故…
 …その時だった…アクマが『何か』を言った…

 「…ふん…何故こんなのを『あの方』が気になさったのか…まあいい…ご命令はこれで果たせたし…これで『あのお方』にお褒め頂ける…」
 …ボソリとアクマはそう言い…

 …そして…

 「…フクク…ギャヒャヒャヒャー!死んだ!死んだ!エクソシスト殺したー!弱くてつまんないヤツだったけど…まあいいやー!エクソシストはまだ他にも残ってるしー!残ったあの女!あいつはもうちょっと楽しめるかなー!それにさっきのあの子供!もしかしたらあいつもまだ生きてるかもしれないしー!意外とタフみたいだしねー!こいつよりは楽しめるかな〜?」
 …そう突然機嫌よさそうに大声でそう言い、スキップしながらアクマは出て行った…
 …舌なめずりをして…

 …その様子を…神田は薄れがちの意識で微かに…だが確かに見ていた…

 
 
…ディスティニー…
         ―マテール編―
               ―18―
 

 
 …僕は…神田の気絶しているらしい部屋から…少し離れた部屋にいた…
 …遠すぎず…近すぎず…
 …万が一にも…アクマとの会話が神田に聞こえたりしない…そして用が終わった時…迷わずに神田のいる部屋に行ける部屋を選んだ…

 「…来たか…」
 …僕は閉じていた目を開く…
 部屋に入ってくるアクマに視線をやる。
 アクマは部屋に入ると、そこで立ち止まり跪く。
 「もっ!申し訳ありませんでしたアレン様!ご無礼の数々…」
 「もういいよその事は…」
 跪いて謝るアクマの仰々しい言葉を、僕はそう言って止める。
 「ハッ…しかし…」
 「いいよ、言っただろう、お前には僕の研究に付き合って貰う。それで構わない。それより時間がないんです、だからさっさと僕は次の話がしたいんです。いいですね?」
 僕はそう言って尚も言い募ろうとするアクマの言葉を遮り…
 …そして指示を伝えた…
 …『僕』が用意した『僕』のすぐ傍の『扉』を指して…
 …この『扉』の向こうの『部屋』で待機していろ…とそう告げた…

                                            ―続く―