「…まだ…神田は助かったわけではありません…」
 その言葉で…アレンくんが何を言いたいのか分かった…お礼を言うのはまだ早いと…そういうことなのだろう…
 …神田の状態を考えればそれは尤もで…
 …そして…私が思う以上に神田は危険な状態なのだと…
 「…神田は血を流し過ぎています…多分…一刻を争う…」
 …アレンくんのその言葉で…私は思い知った… 
  
 
 
…ディスティニー…
           ―マテール編―
                    ―25―
 


 「…神田は血を流し過ぎています…多分…一刻を争う…」
 …僕の言葉にレディーリナリーが目を見開く…
 「…でも…アレンくん…さっきのアクマはアレンくんが倒してくれたのかも知れないけれど…でもっ…他のアクマがっ…」
 …いるかも知れないし…いなくてもまた来るかも知れない…そう訴える彼女に…
 …僕は…あっと思う…
 「…そう言えば…」
 ポリポリと僕は頬を掻く…
 「…あの…神田には…さっき…ちょっと意識が戻った時に話したんですけど…僕…アクマを見分けることが出来るんです…」
 …そう言えば…話してなかったですね…そう言って照れ隠しにアハハと笑う…
 「…アクマを…」
 『見分けられる…!?』
 …あっ…レディーリナリーとトマがハモった…
 「…それ…どういうこと…?…」
 レディーリナリーが身を乗り出す…
 「…えっと…僕がさっき消した『ペンタクル』…また画いていますよね…これには『呪い』の効果があるって言いましたよね?」
 …そう言って僕は額の『ペンタクル』を指差す…
 「…ええ…でも…まさか…それが…?…」
 頷く彼女に…僕は続ける…
 「…ええ…『これ』の『呪力(ちから)』で、僕はアクマと人間を見分け、そして…」
 ―キュイン!
 …そんな音を発てて左目の上に奇妙な片眼鏡の様な形の『レンズ』が現れる。
 「…周囲のアクマの存在の有無を探知(スキャン)できるんです」
 …ホントはあんまり言いたく無かったんですけどね…
 …余計教団に来るように言われるでしょうから…
 …でも…まあ…『これ』を言わないと話が進みませんし…
 …どのみち既に『ペンタクル』も見られていますし…
 …まあ…だから神田にも話したんですけど…
 「…そんな…そんなことが…ホントに…?…」
 レディーリナリーが僕の『左目』をジッと凝視する…
 「ええ、だから僕は当分はアクマの心配は要らないって言ったんです」
 「…そう…だったの…」
 …力無く…レディーリナリーが呟く…
 「……それなら…ううん…でも…やっぱり…またいつアクマが来るか…」
 …神田の方を僅かに見つめ…しかしすぐに頭を振り…彼女は呟く… 
 …彼女はいま迷っている…
 …なら…
 「…レディーリナリー…僕のこと…忘れてませんか…?」
 …貴女の憂いが無くなれば…
 「…えっ…」
 ―レディーリナリーが目を見開く…
 「…『人形』は…『マテールの亡霊』は…僕に任せて頂けませんか?」
 …貴女はどうしますか…?…
 「…会ったばかりの僕なんて…信用できないかも知れませんが…」
 …貴女の目の前にいるのは…『貴方方』からしてみたら『お仲間』である『イノセンスの適合者』…
 「…一応これでも師匠の弟子ですし…レディーリナリーが戻ってくるまで『マテールの亡霊』を…イノセンスを守るくらい出来ますよ」
 …そして『クロス・マリアン元帥』の弟子…
 「…アクマが来れば分かりますし…」
 …さあどうですか?レディーリナリー?…
 「任せては頂けませんか?」 
 にっこり微笑って僕は再度問い掛けた…

                                            ―続く―