「…『マテールの亡霊』は…僕に任せて頂けませんか?」
 …アレンくんのその申し出に…私は気付く…
 …そうだ…二手に分かれればいいんだ…と…

 「任せては頂けませんか?」
 …そのアレンくんの言葉に…心が揺れる…
 …神田について病院行きたい…
 …私の『黒い靴(ダークブーツ)』なら…すぐに病院まで行ける…

 …でも…
 
 …これは…私と神田の任務…途中で他人任せにはできない…
 …アレンくんが信用できないとか…そういうんじゃなくて…

 …これは私の任務だから…
  
 
 
…ディスティニー…
           ―マテール編―
                    ―26―
 


 「任せては頂けませんか?」
 …彼女の決心を促すために…再度したその問い掛けに…
 「…駄目よ…」
 …でも彼女は静かに左右に首を振り…
 「…勘違いしないでね…アレンくんを信用できないとかそう言う事じゃなくて…これは私の任務だから…これ以上アレンくんに迷惑を掛けられないの…」
 …そう言った…
 「…そんな…迷惑だなんてっ…気にしないで下さい…元々僕だって『マテールの亡霊』を調べに来たんですから…」
 …最初に会った時に話したでしょう…と付け足して…
 「…だから『人形』に関することだったら…僕にとっては迷惑なんかじゃないんです…」
 …と僕は告げ…
 「…あの…」
 …そしてさっきまで黙っていたトマが片手を軽く上げて…
 「…神田殿を病院にお連れするだけでしたら私だけでも…」
 …そう言う…
 「駄目ですよ、それこそアクマに狙われるかも知れません」
 …負傷中のエクソシストとファインダーなんて、アクマにとって格好の獲物だ…
 …流石にトマ一人では危険過ぎる…
 「…それはっ…」
 「…確かにそうね…危険だわトマ」
 僕の言葉にトマは言い淀み…レディーリナリーが頷く…
 「…でも…では…」
 「…そうだわっ!」
 …トマが何か言いかけた時…レディーリナリーが何事か思いついたのか両手を叩く…
 「…アレンくん!もし迷惑でないのなら…」
 「…神田を病院へ連れて行って欲しい…ですか?」
 …レディーリナリーの言葉を遮り…僕は彼女が言うであろう言葉を口にした…

                                            ―続く―