「…神田殿を病院にお連れするだけでしたら私だけでも…」
「駄目ですよ、それこそアクマに狙われるかも知れません」
トマの言葉に…アレンくんが即座に首を横に振る…
「…確かにそうね…危険だわトマ」
…アレンくんの言葉は正しい…二手に分かれるにしても…結局どちらにもエクソシストはいた方が良い…
…トマ一人なんて危険すぎる…
…でも…それならどうすれば……
「…そうだわっ!」
…そこまで考えて…フッとある考えを思いつく…
…アレンくんに迷惑を掛けられない…さっきはそう言ったけれど…
…もう少しだけ…あなたの優しさに甘えさせてもらっても…いいかしら…?…
「…アレンくん!もし迷惑でないのなら…」
「…神田を病院へ連れて行って欲しい…ですか?」
…言いかけた私の言葉を遮って…私が言おうとした事を…アレンくんが微かに微笑ってかわりに言った…
…ディスティニー…
―マテール編―
―27―
「…アレンくん!もし迷惑でないのなら…」
「…神田を病院へ連れて行って欲しい…ですか?」
…レディーリナリーの言葉を遮り…僕は彼女が言おうとしていただろう言葉を言った…
「…レディーリナリー…正直『それ』は…僕も一度は確かに考えました…」
…でも…それには1つ問題がある…
「…でも…僕は『それ』を言いませんでした…それは僕が神田を嫌いだからではなく…その…」
…僕は言い淀む…
「…僕は…迷子のプロなんです…」
…正直…ちょっと…恥ずかしい…
「…僕だと…病院に辿り着くまでに何度迷子になるか解らないんです…」
…『方舟』か『能力』を使えば…別なんでしょうけど…流石に神田を連れてそれは…ちょっと…
「…迷子の…プロ…?…」
…あっ…ああ…レディーリナリーとトマの視線が痛い…
「…は…はい…実は…」
…で…できることなら言いたくなかった…恥ずかしい…
「…でも…じゃあ…どうやってここまで…」
「…ふ…普段は…マナかティムに案内して貰うんです…ここに来る時も…ここまでの地図をマナが…でっ…でも…病院の場所なんて…マナのデータに入れてないですし…」
…レディーリナリーの問いに…僕はマナを見ながら答える…
…嘘は言っていない…普段は本当にそうしているし…
…このマテール周辺の地図をマナが持っていると言うのも本当…
「…だっ…だから…その…僕としてはここに残る方が気が楽だったから…その…」
…気恥ずかしさから…僕は言い淀む…
「…そうだったの…」
―くすり…とレディーリナリーが笑い…
「…解ったわ…そう言うことなら…アレンくん…『マテールの亡霊』のこと…お願いしても良いかしら」
…にっこり笑ってそう言った…
―続く―