「…ええ…多分…百パーセント迷うと思います…でも…女性一人に力仕事をさせるわけには…もしかしたら…運良く行きは迷わずに病院まで行けるかも知れませんし…」
 …ちょっとアレンくんの目が中を泳いでる…
 …もしかして…アレンくん…
 「…あの…アレンくん…無理しなくても…」
 …私のために…無理してくれてるんじゃ…そう思って…問い掛けると…
 ―ピクリ…とアレンくんが一瞬強張る…
 その様子に…
 …もしかして…図星だったのかな…?…などと思っていると…
 「無理なんかじゃありません…『マナ』もいますしきっと…僕だってもう子供じゃありません…もう15なんです!そろそろ方向音痴から卒業しても良い頃の筈です!」
 …なんだか…アレンくんが随分とムキになってそう言った…
 …アレンくん…昔…何かあったのかしら…
 …でも…しっかりしてると思ってたのに…時々ちょっと子供っぽい感じがしたのは…
 …そっか…アレンくん…まだ15だったのか…
 …はじめて会った…年下の男の子…年下のエクソシスト…その存在に…なんだか私は随分と嬉しくなって…
 ―くすり…と笑って…
 「…やっぱり…私が行くわね…」
 …にっこり笑ってそう言う…
 …弟ってこんな感じかしら…そんな風に思いながら…
 「…いいから…『お姉さん』の言うことを聞いて!アレンくんはマテール(ここ)にいて!」
 それでも尚行くと言おうとするアレンくんに、ずいっと身を乗り出して強く言うと…
 「…わ…分かりました…」
 なんだか悄然とした様子で俯き…アレンくんがそう言う…
 …フフ…アレンくんかわいい…
 …やっぱりアレンくん教団に来てくれないかな…?…きっとアレンくんが入団(はい)ったら…楽しいだろうな…
 …そう思って…もう一度後で頼んでみようかな?と思った… 

 
 …ディスティニー…
           ―マテール編―
                    ―29―


 
 僕は…結局頷いた…それには…レディーリナリーの言葉で…冷静に戻ったと言うのもある…
 …確かにここでわざわざ意地を張る必要はない…それに…そもそも…レディーリナリーが病院に行くように話を運んだのは僕だ…
 …それなのに…僕が病院に行ってレディーリナリーがここに残るのは本末転倒だ…
 …あの二人のためにもここから他の人間を追い払いたくて元々言ったことだったのに…
 …ムキになって危うく忘れるところだった…あぶないあぶない…
 …こんな事知られたら師匠に笑われる…ここにティムがいなくて良かった…マナには後で口止めしとこうっと…
 そう思いながらも…
 …でも…まだだ…と思う…
 「…分かりましたが…レディー…やっぱり貴女一人でというのは反対です…」
 「…でも…」
 「…せめてトマと二人で行くべきです…移動の途中をアクマに狙われないとも限りませんし…それに神田を病院で一人にするつもりですか?」
 「…それは…」
 僕の言葉にレディーリナリーが言い淀む。その様子に、彼女の迷いを感じ取り、畳み掛けるように続ける。
 「すぐに戻ってくるつもりなんでしょう?それなら誰かが神田の傍にいた方が良い、彼にしても気が付いた時に一人で病院にいたら状況が解らなくて困りますよ」
 「…そう…ね…アレンくんの言う通りだわ…じゃあトマ一緒に来て…アレンくん悪いけど私が戻ってくるまで…ここをお願い…」
 「解りました」
 にっこり微笑って僕は答え…
 「レディーの仰せとあらば喜んで」
 彼女の手を取ってその手の甲に誓いの口付けを落とした…

                                            ―続く―

 ―あとがき―
 どうもお久し振りですRINです。
 随分長らくお待たせしてしまいました、『…ディスティニー…』マテール編第29話です。
 色々あってこの29話は殆ど書き上がっていたのにも関わらずこれまでUP出来ませんでした。
 皆様申し訳ありませんでした<(_ _)>

                             ―それではまたの機会に―RIN―