「…あの…アレンくん…無理しなくても…」
―ピクリ…
…えっ…?…無理…?…
…「…ああ…分かった分かった…アレン…迷子は子供の特権だ…無理するな…」…
レディーリナリーに『無理』と言われた瞬間…僕は…ふと…唐突に思い出した…子供の頃に…師匠に言われた言葉…
…無理だと言われて意地になって…フ…フフフ…
「無理なんかじゃありません…『マナ』もいますしきっと…僕だってもう子供じゃありません…もう15なんです!そろそろ方向音痴から卒業しても良い頃の筈です!」
…フッ…師匠…今日こそ貴男に前言撤回を…
「…やっぱり…私が行くわね…」
僕は燃えていた…迷わずに目的地に着いて師匠に吠え面かかせてやると…
しかしその僕に…なんだか沈痛な面持ちでレディーリナリーが嘆息を吐きながら言う…
「レディーッ!」
…そんなっ!折角っ!…そう思って僕が声を上げると…
「…いいから…『お姉さん』の言うことを聞いて!アレンくんはマテール(ここ)にいて!」
ずいっとレディーリナリーが身を乗り出して…僕に言う…
…あの…レディー…なんだかコワイです…
「…わ…分かりました…」
…こう言う時の女性には逆らってはいけない…そしてあからさまに恐怖を表面に出してもいけない…女性は恐がられることを喜びはしない…
師匠のたくさんの愛人さん達との付き合いで…僕は『それ』を骨身に染みる程よぅく知っていた…
…ディスティニー…
―マテール編―
―30―
レディーリナリーの言葉でなんとか冷静に戻れた僕は、「神田を病院に」と言った…その『本来の目的』を思い出し、レディーリナリーに頷くと…そもそも「一人で行く」と言った彼女のその言葉を撤回させて『トマと二人で神田を病院に連れて行く』そうするようにし向けるのが目的だったのだと…その本来の目的に立ち返り…僕は見事『説得』に成功した。
…そしてトマとレディーリナリーの二人は…神田を連れて病院へと向かった…
―続く―
―あとがき―
どうも皆様、RINです。
今回申し訳ありませんが、本文部が短いです…一方で代わりと言うわけでも無いのですが…冒頭部が今回は長いです…
今回の冒頭は前回の冒頭のアレンくん視点です…
…実は29話と30話はこの為に話の構成に散々悩み…微調整を何度も繰り返す内にどんどん月日が経ってしまって結果皆様方を散々お待たせすることに…
…一時は丸々書き直そうかと思っていたのですが…そうするとまた別の所で不具合が出て来そうなので止めました…
…そんなわけで妥協したところがあるので…私的にはこの前後数話は不完全燃焼なものとなっております…
…そう言うわけですので…もしかしたらその内…忘れた頃に加筆修正とかするかも知れないし…しないかも知れません…悪しからず…
(…にしても…本文より『あとがき』の方が長くなってしまいました…トホホ…)
―それではまたの機会に―RIN―