―少しずつ近くなる…歌声…

 …美しくも…哀しい…造花の子守歌…―

 …『遠見』で視た『情報』が確かなら…ここの角を曲がれば……
 そう思いながら角を曲がり…僕は更に先へと進んだ。


 
…ディスティニー…
           ―マテール編―
                    ―35―
 


 ―角を曲がって暫く進むと…思った通り…『其処』に『二人』はいた…
 見回すと其処はまるで『広場』か何かのようで…その中心で『ララ』が『グゾル』を膝に寝かせ歌を唄う…
 その姿はさながら…『子供』を寝かしつける『母親』のよう…
 …そんなフウに感じるのは…僕が『二人の関係』を『知っている』からか…
 そう考えてクスリと微笑し…
 …むしろ…『月明かり』に照らされる様は…まるで『スポットライト』に照らされる『舞台』…
 …余人は立ち入ってはならない…『ララ』と『グゾル』の…『ララ』が『グゾル』に捧げる『舞台』…
 …『其処』に僕は踏み入ろうとしている。…無粋だな……
 そう考えてまたクスリと…けれど今度は自嘲の笑みを漏らす。

 ―そうして僕は…それでも…と胸中で呟き…
 …そして一歩踏み出す。
 「……マナ…行こう…」
 子声で『マナ』に呼び掛けて…
 そして一歩…また一歩と…『ララ』と『グゾル』の方へと歩いて行った…

                                       ―続く―