広間の様なその場所に流れるのは優しい…けれどどこか物悲しい『何か』が込められた『少女』の『歌声』…

 ―ただ一人の為の『それ』…

 …『この場』に立ち入ることを…『無粋だ』と感じながらも…それでもアレンは『彼ら』の元へと向かうべく『広間』へと足を踏み入れた。


 
…ディスティニー…
           ―マテール編―
                    ―36―
  


 ―サクッ…
 『広間』は何故か床が砂で覆われていたため僕の靴音はそんな音を発てた。

 そして恐らくその『靴音』を聞いてだろう…『ララ』と呼ばれていた『少女』の姿をした『人形』が弾かれる様に顔を上げる。
 「!誰っ!!」
 『彼女』は僕を見て目を大きく見開き、そう誰何の声を上げる。
 その『彼女』の様子に…(こちらも気が付いたのだろう…)『ララ』に膝枕されていた『グゾル』と呼ばれた『老爺(こども)』がゆっくりと起きあがり帽子を直しながら『こちら(つまり僕の方だ)』を見る。

 …油断なく探るような目で『僕』を見る『二人』…完全に警戒しているようだ。

 そんな『二人』の様子を見て…
 …まあ当然でしょうね…と胸中でのみ頷く。

 ―…無理もないのだ。『二人』が警戒するのは…

 …仕方ないですよね…だってさっきまで突然現れた『二組』の『何か』に良く解らない『理由』で狙われて…『二人』は引き離されそうになっていた。ともすれば命の危険さえあったのだから…
 そう考えて、そして僕は…『僕』が少なくとも『二人』に『危害』を加えるつもりが無いことを伝える為にも『にっこり』と穏やかな笑みを浮かべて… 
 「初めまして、僕はアレン・ウォーカーと申します」
 そして名を告げ…
 「時間がないので手短に…僕と一緒に来ませんか?」
 そう『用件』を伝えた。

                                       ―続く―