「…だから…嘘は吐かなくて良いですよ、おじいさん」
 僕はにっこりと笑い掛けてそう言った。

 …けれど…そう言った次の瞬間には、二人は目を見開き険しい表情で『こちら』を睨みながら、共により強く身を寄せ合う。
 老人(グゾルさん)は『少女(ララ)』を抱く手に僅かに力を込め、『少女(ララ)』もまた彼にしがみつくように寄り添い身を寄せる。

 …そんな二人の姿に…無理もないなと内心で苦笑しつつ…

 「…警戒しないで下さい。さっき言ったことは本当です。僕は特別イノセンスを必要とはしていません。師匠への義理がありますから出来るだけ『入手』してはいますが。アクマに奪われて『破壊』さえされなければ別に良いんです」
 そうにこやかに笑い掛けて…
 「…だから…『キミ』ごとでも別に僕は良いんです。師匠も無理矢理『キミ』から取り出せなんて言わないと思いますし…」
 そう告げた。

 ―その『心臓』を奪うつもりは無いのだと…

 
 
…ディスティニー…
           ―マテール編―
                    ―38―
 


 「…警戒しないで下さい。さっき言ったことは本当です。僕は特別イノセンスを必要とはしていません。師匠への義理がありますから出来るだけ『入手』してはいますが。アクマに奪われて『破壊』さえされなければ別に良いんです」
 …少しだけ困ったように一瞬だけ笑って…そして目の前の少年はにこやかにそう告げた。
 …少年の言った『師匠への義理』と言うのは良く解らなかったが、この少年はどうも無理矢理『心臓』を奪うつもりは無いのだと言うことだけは解った。

 …だけど…少年は『一緒に来い』と言った。

 …それはつまり…やはり完全な意味では見逃すつもりなどないのだと思った。

 「…だから…『キミ』ごとでも別に僕は良いんです。師匠も無理矢理『キミ』から取り出せなんて言わないと思いますし…」

 そして次いで少年が言った『その言葉』に…『やはり』と思い…

 …それでは結局『同じ事』だ。とそう思った。

                                       ―続く―

 ―あとがき―
 久方振りの『神』シリーズ【…ディスティニー…『マテール編』】の続きです。
 お待たせ致しました。
 
 今回本文部はアレンじゃなくて、ララとグゾル二人(?)のどちらか…或いは両方として書きました。
 …特にどちらかと言うでもなく、どちらの視点でも読めると言う形式(かたち)で…

                                  ―それではまたの機会に―RIN―