「…リナリー殿は大丈夫でしょうか?」
…そう言ったのは今回の任務に一緒に来た、ファインダーの男…トマだった…
「…アクマのヤローがリナリーそっくりに化け…リナリーは廃墟のどこかに落ちた…そう言ったな…」
…神田はトマが合流した時聞いた事の確認を取る様に言い…
…こくりと頷いたトマを見て…
「…なら大丈夫だろう…エクソシストはそれほどヤワじゃない…それより…注意しなければ行けないのは…アクマがリナリーそっくりに化けることができるのなら…」
「…やはりリナリー殿を捜すべきでした…」
…神田の言葉に…トマはその重要性を気付き…そう言う…
「…アクマと戦えもしないファインダーが1人でか?死人が増えるだけだろうが」
神田はそっけなく止めておけと言った…
…ディスティニー…
―マテール編―
―5―
ドドドドドン!!!
…土煙と轟音…
…少年はしっかりと抱きしめて自分を庇う…アクマの弾丸から…
…なんてこと…私が気付いて…この子を連れて離脱すべきだったのに…
…呆然とリナリーは考える…自分のイノセンスならそれが出来たのにと…
ビキビキビキー!!
…なんの音だ?
アクマの攻撃が止まった…その時その音を聞いた…
ガクッン!
…足下が…
ドゴーン!
…崩れた…のか…
…落ちる…そう思った瞬間イノセンスを発動させていた…勿論発動レベルは1なのだが…
…この際…もうどうこう言ってはいられなかった…
…どのみち…この少女の目の前でアクマに撃たれてしまったのだから…
ガガガガガー!!!
ガシン!
イノセンスで壁に捕まろうとし…引っ掻き続け…しかし…遂に壁が途切れる…
…何もなくなって…どうしようかと思った次の瞬間…壊れ掛けたシャンデリアに引っ掛かる事が出来た…
…足下が崩れ落ちた…
…それに気付いてダークブーツを発動させようとして気付く…
…自分を抱きしめて庇ってくれた…あの男の子が…真剣な顔で…左腕を頭上に伸ばしたのを…
…そして今度こそ…はっきり見た…その少年の手が巨大化した所を…
…地面に無事に降りることが出来た…でもリナリーは…確かめなければならなかった…
…あれほどのアクマの攻撃…恐らくアクマに弾丸は当たっている筈なのだ…
…そして…あの『手』…
…確かめなければならない…目の前の少年が何者なのか…
「………!」
確かめるために顔を上げ、声を掛けようとして…リナリーはハッとする…
…目の前の少年の顔にペンタクルが浮かび始め…一気に浸食がはじまったから…
「!なんてこと!あなたやっぱり撃たれたのね!どうして庇ったの!あの弾丸はっ」
「知ってます…大丈夫ですよ…僕は…」
自分の言葉を遮ってこの少年はそう言った…
「?え…」
…その言葉の意味に…目を見開く…
「…あーあ…参ったな…こうなるともう誤魔化すのは無理ですね…よりにもよってエクソシストに見られるなんて…師匠に怒られますね…ハハ…」
…ああ…コワイなー…ハハ…そう言って乾いた笑いを浮かべる彼の正体は…もう二つに一つしかなかった…
…そして…リナリーは見る…少年の赤黒い左手と…その手の甲で黒い十字が不思議な輝きを放ち、その瞬間一気に少年の身を蝕む『毒』の浸食が引いていくのを…
…そしてそれまで髪に隠れて見えなかった…額のペンタクルを…
―続く―