「…あなた…それ…まさか…」
 …額のペンタクルにまさかと思う…
 「…僕はアクマではありません…このペンタクルは『特殊』な『染料』を使って画いている一種の魔法陣で…ある『呪い(まじない)』の効果があるんです…その証拠にホラ…」
 …消せるんですよ…そう言って少年は額の『ソレ』を擦って消す…
 「…で…でもアクマだって…それにあの『腕』は?あなたがアクマじゃないならあなたは『何者』なの…科学者の弟子だなんてなんで嘘をっ!」
 「ええ…そうですね…確かにアクマのペンタクルも普段は消えています…でも『僕』はアクマではありません『人間』です…そして『科学者』の弟子なのは『嘘』ではありません、さっきの話しに『嘘』は一切ありません…」
 そう言ってにっこりと少年は笑う…
 
 
 
…ディスティニー…
         ―マテール編―
               ―6―



 「…どういうこと…」
 …目の前の少女が目を見開く…
 「…僕さっき言いましたよね…僕は師匠の弟子だからあれくらい出来て当然だと…」
 …僕はくすりと笑ってそう言う…
 「ええ」
 僕の言葉に頷く彼女…
 「…エクソシストのお嬢さん…」
 …彼女に僕は…とうとうこの時が来たかと…そう思いながら話し始める…
 「リナリーよリナリー・リー」
 …すると彼女がそう名乗る…
 …その名前には…心当たりがあった…師匠から聞いたことがあったから…
 「ああ、失礼そう言えば名乗ってませんでしたよね…僕はアレン、アレン・ウォーカー、では改めてレディーリナリー、このゴーレム『マナ』と言うのですが、見覚えはありませんか?」
 …勿論うっかり忘れていたわけではない…本当は『教団関係者』には名乗りたく無かったのだ…
 …だが…この場合は止むを得ない…まして…女性に先に名乗らせてしまったのだ…こう言わざるを得ない…
 「…わ…私のことはリナリーでいいわ…それより…何故クロス元帥のゴーレムにそんなにそっくりなの?」
 彼女…リナリーが少し赤くなって…慌てた感じでそう言う…
 …どうしたんだろう?もしかして『教団』の人達は、この魅力的なレディーをエクソシストだからと女性扱いしてないのだろうか?
 …そう言えば…師匠が言ってたな…『教団』は適合者を見つけると人攫い同然に連れて行くと…
 …なるほど…そんなところなら…
 …あれ…?…でも確か彼女は幹部の妹でもあったんだよな…?…じゃあそんな無体な扱いも受けてない筈…だけど…ああ…でも…確かその人…師匠の…あの師匠の『友人』なんだよな…しかもあの師匠が『変人』って言ってたような…
 …まあ…師匠の言うことだし…あんまり深く考えないでおこう…
 …そんなことをつらつらと考え…しまいに蒼白になっていると…
 「…どうしたの…?…」
 …そう不思議そうに声を掛けられた…
 「…あっ!いえ…ちょっと…師匠のことを…ああいえこちらのことなんです…ええ…大丈夫ですので…」
 …僕は慌てて手を振ってそう言い…
 …コホン…と一つ咳払いをして… 
 「…えっと…続けます…えーと…実は…僕の師匠は科学者でもあるエクソシスト元帥、クロス・マリアン神父なんです…僕はクロス師匠の弟子で助手で…この『左腕』は寄生型のイノセンスで…『マナ』は師匠のティムをモデルに作った試作ゴーレムなので、ティムキャンピーに『マナ』が似ているのは当然なんです…」
 …気を取り直してそう言った…
 「…寄生型…だから平気だったの?…しかもあなたあのクロス元帥の弟子なの…」
 …なんか…『あの』って言う部分が少し強かったような気がするのは…僕の気のせいでしょうか…僕がいつも考えているからそういう風に聞こえたんでしょうか…?…
 「…はい…」
 …そんなことを思いながらも…僕は重々しく頷く…
 「…元帥は生きておられるのね…」
 …え?…なんですそれ…?…もしかしなくても死んだとか思われてたんですか?…ひょっとして『教団』では死亡説とか流れてるんですか?
 …そんな…有り得ない…
 「勿論です…殺しても死ぬような人じゃないですよあの人は…」
 …にっこり笑ったつもりだったが…少し口の端が引きつった…きっと有り得ない…恐ろしいことを聞いてしまったからだ…
 「…どうして最初それを言わなかったの?…私を誤魔化して隠し通すつもりだったんでしょう…」
 …そして当然の如く問い質される…
 …当たり前かと思いつつ…こうなった時のために考えていたことを言う…
 「…僕は…その…いまは師匠の指示でチョット別行動してますが…終わったらすぐに師匠に戻るように言われてます…そんな時に僕が『教団』の方に見付かったら…師匠にも見付からないようにと言われてたのに…師匠がなんていうか…そのご存知かも知れませんが師匠は『教団』が嫌いなので…」
 …尤も…これも全て本当のことだ…『嘘』は言っていない…
 「…そう…確かにクロス元帥は…4年前から本部に帰ってないけど…そんなにすごいの?クロス元帥の本部嫌い…」
 …確かにそんな噂聞いたことあるけど…そう小さく付け足すように彼女は言う…
 「…凄いなんて…そう言う問題じゃないんです…師匠は本部が嫌いで子飼いのサポーターに口止めして回ってるんですよ…それに…大事なのは僕が師匠の言い付けを守れたか否か…お願いです!レディーどうか見逃して下さい!僕死にたくないです!!」
 …これは…心底本音だった…まあ殺されても僕はそう簡単には死なない…ノアの唯一の弱点であるイノセンスも僕には意味がない…でも痛みは感じるし…それに師匠のお仕置きでこれまで何度も地獄をみている…下手したら本当に蘇生できるからとか言って殺される…半殺しも全殺しもどっちもごめんだ…
 「…そ…そんなこと言われても…」
 …僕のその勢いに圧されたのか…落ち着いてと言いながら…彼女は少し心持ち身を引いた…
 …とその時だった…背後から男の声がした…
 「そうだ、そう言うわけにはいかないな」
 …振り向くとあのエクソシストの男ともう1人…恐らくファインダーとやらだろう…がいた…
 …油断したな…話しに気を取られ過ぎていた…
 …さっきのアクマの攻撃を受けた時と言い…僕もまだ修行が足りない… 
 「神田!それにトマも」
 …リナリーがそう二人の名を呼ぶ…
 …Kanda…カンダ…神田かな?…日本人のファミリーネーム…って言うことはこのエクソシストやっぱり日本人か…
 …トマって言うのはファインダーの方だな…
 …だってこの顔明らかに日本人だし…
 …そんなことをつらつらと考えながらも…慌てた様子を半分演技で装う…
 …半分は本心だけど…僕は必要なら感情くらいコントロールできる…それが出来ないようじゃギャンブルで勝ち続けるなんて無理だ…
 「あわわわ!そんなー!困りますっ!教団の方みたいですけど…貴男もしかして師匠の滅茶苦茶さを知らないんですねっ!!」
 …尤も…僕は本当に一つも『嘘』は言ってない…
 「4年も行方不明の元帥の消息を知る、寄生型イノセンスの適合者を見逃せだと!?出来るわけないだろうがっ!!」
 神田というそのエクソシストはそう怒鳴りつけてくる。
 …まあ…当然の反応だろう…でもだからって僕がそれに従う必要はない…
 「そんな……ならっ!僕のこと『報告』するのは兎も角今回だけは…お願いします!まだ師匠の『お使い』の途中なんです!!」
 …とにかく…あちらがどんなつもりだろうと…僕の決定事項は揺るがない…
 …『教団』に行くつもりがないと言うことをはっきりと言い…あとは用が終われば彼等をまけばいい…
 …僕には簡単に出来る…
 …彼等から死角になる場所まで移動して…後は『方舟』を使えばいいんだから…

                                            ―続く―

 ―あとがき―
 どうも皆様こんにちはRINです。
 …ようやく神田が出てきましたが…長くなったので…二人の言い争いの途中ですが取り敢えず切ります。
 …早く神田とアレンのモヤシ!アレンですっ!…といった言い争いを書きたいです…
 …『クロノ=クラウン』と違いこのシリーズはコメディ色が強いです…普段基本シリアスばかり書いてますが…こういう掛け合いも大好きですv
 …油断すると会話文ばかりつらつらと出てきて…時々非常に困ったことになります…
 …それでも…どうしようもなくてそのままUPしてしまったものもあります…ハハ…申し訳ありません…
 …会話文だけって…色々解りにくいですよね…はあ…
 
 …さて今回冒頭で以前…序章のあとがきで書いたペンタグラムを消せると言うシーンを書きました…尤もリナリーの視点なので…外見的な部分だけしか表せませんでしたが…
 …何れその内アレンくん視点で詳しく書きたいと思っております…

                                  ―それではまたの機会に―RIN―