―カツン…カツン…カツン…
 …響く足音…感じる『気配』…
 …近付いて…くる…

 …何故?…何故?…この『場所』に閉じこめられてもう20年近く経っている…
 …でも千年公は…最初の数年間はともかく…ここ数年は滅多に来なかったのに…

 …悪い予感がする…
 …コワイ…
 …以前来たのは三年前…『あの人』を殺したと言った…
 …『あの人』を殺して…そしてもうじき『あの子』が見付かるだろうと…
 …次に来る時は『あの子』を見付けた『時』…そう言っていた…
 …コワイ…
 …もし千年公が『あの子』を見付けていたら?…
 …大丈夫…落ち着くのよ…千年公のそばには『あの子』の『気配』は感じない…
 …そして間違いなく『あの子』は生きてる…
 …何処にいるかは解らなくても『それ』だけは解る…

 …だから…恐がる必要は…ない…筈…

 …ああ…『アレン』…どうか無事で…

 …いまはもう何処にいるのかも解らない…どれくらい成長したのかも解らない…『我が子』の無事をただ祈る…


 
―ミッシング・チャイルドの行方―
                ―4―
 


 「…お久し振りですネェ?v」
 にっこり笑って豪奢な…『結界』と言う名の『牢獄』に閉じこめたその『女』を見る。
 …よくよく見れば…髪の色が白く変わり…成長したアレン・ウォーカーには、瞳の色こそ違えど、確かにこの『女』の『面影』がある…
 …性別と性格の差で多少異なるとはいえ…そもそも『ノーブル』の顔形は殆ど同じなのだ…なのに何故いままで気付けなかったのか…
 …髪と瞳の色の違い…『特有』の『気』を感じなかったこと…そしてあの『年頃』の頃の顔など殆ど忘れていたからか…多少どこかで見たような…その程度にしか感じず…気付けなかったのは…やはり先入観が邪魔してか…
 …それに…『男』の『子供』は久し振りでしたしネェ?v…
 …既に壮年の『男』である何世代か前の『子供』のことを思い出す…
 「以前お約束したこと…覚えておりますカ?v」
 内心で思っていることは隠してにこやかに話しかける…
 「貴女の『息子』が見付かりましたヨ?v」
 …その紅い瞳を見つめ、にっこりと笑う…
 「…う…そ…」
 …裏切り者の『妻』であった『女』が震える…
 「嘘ではありませンv…まさか『ノア』の『子供』が『あの場所』に『いる』とは思いませんでしたガv…今回偶然見付ける事が出来ましタv…運が良かったでスv」
 …まずは思わせ振りな事を言って反応を見ましょウv…
 「…嘘よ…だって…」
 …信じられないと『女』は首を左右に振った。

                                            ―続く―