「ようやく見つけましたヨv14番目v」
…そう…ようやく見付けた…
―ニィと笑い…
「子供はどこでスv」
…後は聞き出すだけ…
…大切な子供の居場所を…
―プロローグ―
―3―
「…まったく…いったい何を考えてお前達はこんなことをしでかしたのか知りませんガv…」
…そう…呆れ混じりに千年公が言う…
「…お前のやったことは許し難いことなのですヨv14番v」
「…殺すなら…殺せ…」
…そう…覚悟はとうに出来ていた…
…唯一の気掛かりは…
「…勿論殺しまスv…でもその前にお前には聞くことがありまスv」
「…あ…あの子は…クロスに預けた…『教団』が保護してくれている筈だ…」
…そう…そういうことになっている…
「…そんな馬鹿な話を信じると思いますカ?vよりにもよって『教団』がノアを?」
…信じがたかろうが信じて貰わなければ困る…
「…あ…あの子はノアじゃなかったんだ…だからクロスに…ノアの情報を流す引き替えに…あの子の保護を…」
「!なんトッ!なんという愚かなことヲッ!!」
…私の言葉に千年公が目を見開く。
「あれは『ノーブルの子供』でスvノアでないなどとそのようなことは有り得なイ!v」
…そう…そんなことは有り得ない…
…だがそんな有り得ない事態より尚有り得ぬ事が起こってしまった…
…その事実だけは千年公に知られてはならない…
…知られればきっと千年公はあの子を殺す。
…激高する千年公の様子に…それを確信する。
「…フウvまあいいでしょウv『母親』の方もそんなことを言っていましたが…所詮は裏切り者の戯れ言でスv…それに…『あれ』は世間知らずなので『お前』に唆されたのでしょウv…我輩が子供を連れて帰りノアであることが解れば目を覚ますでしょウv」
…そう言って千年公がにっこり笑う…
「…もう一度聞きまスv子供は何処ですカv…クロスに渡したと言うのが本当であろうと居場所くらいは知ってるでしょウv」
「…こうなることは解っていた…だからクロスには何も聞かなかった…」
…そう…聞いてはいない…
「…裏切り者の戯れ言は信じなイv…そう言った筈ですヨv」
「…なら…何故聞くんだ…」
…嫌な予感がする…
「…アレンくんというそうですネv…お前が拾って育てている子供v」
…アレン…
…まさか…
「…身代わりかカモフラージュか…お前はどういうつもりか知りませんが…随分お前に懐いているようですネェv」
…身代わり?
「…そんなんじゃない…あの子は…千年公!頼むあの子には手を出さないでくれっ!あの子は関係ないんだっ!」
…これではなにもかもがっ…
「…おやおや?v子供の身代わりかと思っていましたが、お前も随分入れ込んでいるようですネv…これはさぞ強力なアクマが出来るでしょウv」
…アクマ…
…気付かれたわけではないのか…
…だが…
「千年公っ!」
「裏切り者のお前の頼みなど聞く筋はありませんガv…話によってはあの子供…アレンくんは見逃してもいいですヨv確かに関係ないですしネェ?v」
…ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべ千年公は言う。
「…だ…だから…知らないと…」
…そう言うしかない…
…本当の事など言えよう筈がない…
「オヤオヤv可哀想ニvアレンくんvお前の事をあんなに慕っているのにやはり所詮は身代わりでしかないトv」
「だからっ!本当に聞いていないんだっ!」
…ああ…これでは本当に…
「…先程も言いましたヨv裏切り者の戯れ言など信用できないトvやはりアクマにしてその『口』から改めて聞きましょウv」
…アクマにされてしまう…
「…お前が死ねばアレンくんはさぞ悲しむでしょうネv」
…もう避けられない…
「…では次に会う時にはお前は我輩の忠実なアクマでスv良い答えを楽しみにしていますヨv」
…そう言って千年公は何処ともなく消えた…
…私は…もう死ぬ…
…最期にあの子の顔を見たかったが…だが泣き顔を見るよりはいいか…
…いや…どうせ泣かせてしまうか…
…アクマにされる…それはもう避けられないのだろうから…
「…千年公…あんたの思惑通りにはならない…」
…私には…精々時間を稼ぐ位しか出来そうもないが…
…ほんの数分で良い…
…そうすれば…
フッ…と笑いが零れる…
…皮肉だな…
…散々呪った『アレ』が…
…あの子の運命をねじ曲げた『アレ』が…
…いまとなっては唯一の希望とは…
「…アレン…愛しているよ…」
…私の…
…私達の…
…たった一人の…息子…
…たとえどんなことになっても…お前の幸せを…私は祈っている…
―続く―