REMINISCENCE―T―

 封神計画発動
 【精神(アストラル)世界での会話】
 そこは何もない奇妙な空間だった……
 そこには三人の少年がいた、否、少年の姿をした存在(モノ)がと言い直すべきであろう……
 薄暗い、その空間では少年達の姿は影になっていて、その顔は見ることはできない。
 そこに来ることができるのは、そしてその存在を知っているのは彼等だけだった。
 【今日、原始天尊様から命が下された……】
 【ハッ、封神計画か……】
 【我らのことは気付かれてはならぬ、汝らはこれまで通りに、何も知らぬ振りを通せ……】
 三者はかんたんな言葉を交わして、そしてその場をそれぞれ去って行った……
 
 ―人界―(太公望)
 原始天尊様から打神鞭と四不象を授けられ、人界に降りてきて直ぐに申公豹に出会った。
 謁見の間での一部始終をあやつが覗いておった事は気付いておった。
 原始天尊様は敢えて覗かせておったようだ……
 「服が悪趣味―センス最低―」
 申公豹をわざと怒らせ、攻撃させる事によってあやつが雷公鞭を使いこなせておることは判った。
 羌族の村が背後にあった事も知っておった。
 かわそうとしてそれに気づき、それを守りかつあやつに一矢報いた事実(こと)により……
 【これであやつはそなたを注視する】
 空間にはいくつものパネルが人界や仙界の様子を映している。
 その中には、意識を失った太公望と四不象の様子やそれに対する、申公豹と黒点虎のやりとりも総て映されていた……
 そこには二つの少年の姿をした影がいた。
 ―仙界・崑崙山・玉虚宮―
 「申公豹が太公望に興味を持ったようじゃ……」
 崑崙を下山した太公望の様子を千里眼で見ていた原始天尊が呟く。
 ―仙界のその様子を映すパネルを見ながら、影の一つが言う。
 【千里眼か……だが……】
 【千里眼でも、否、何人もここまでは覗けぬ……】
 もう一人がそう後を引き取る……
 【わしはもう行く、あまり長いこと気絶しておる訳にもいかぬからのう】
 そう声をかけ、一人は姿を消した。
 ―人界―
 草原に倒れている太公望と四不象の周りには子供が集まっていた。
 ―死んでるのか?/さぁ…・うわーっ!変な生き物もいるぞ!!/さっきの雷にやられたようだぜダメじゃないか?/でも…雷が村に落ちてたら大変だったよね…… /あー目が開いた!!―
 太公望はそれをぼんやりとした意識で聞き……
 ―あの村は無事であったか―
 そう思い、そして身を起こす。隣では四不象が足をバタつかせて起きあがる。
 『生きてるぞぅ/わーい!』
 歓声を上げて子供達が去っていく。
 「いっ…生きてるっス」
 驚く四不象の隣で、太公望は、ぱむぱむと両手で顔を叩いて気合いを入れる。
 「甘くみておった、もっと気を引き締めねばならぬ!」
 きっ、と顔を上げる太公望に、四不象が問う。
 「…これからどうします?まだ封神を続けるっスか?…それとも」
 「まぁイキナシあんな強いのに当たったのは不運であったが、もうはじめてしまったことだ後には引けぬ!」
 殷王墓の前まで来たときだった、太公望の足が止まる。
 太公望は重々しく墓に語りかける、だが、その緊張感もすぐに消えいつもの太公望がそこにいた。
 ―つづく―


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