『崑崙国1』 ―2―
玉虚宮の最奥―崑崙でも一部の者しか出入りを許されぬその領域を、普賢は歩いていた。
―太公望師叔を捜しているんですけど―
白鶴のこの言葉は、玉虚宮にいる筈の太公望が彼には見つける事が出来ない所に居るという事を意味していた…
…それならば、この最奥の領域の何処かしか無い…
12公子の一人に身を連ねる、自分に入れる領域内に居てくれればいいが、太公望は時たま意外な所に出没する…
太公望は元首である原始天尊の一番弟子であり、後継者と目されている人物である、他の公子達は侵入を禁じられている所への出入りも許されているのかも知れないし、そうでなくとも彼は抜け道を見つけるのが巧い禁じられていても、そんな事はお構い無しで自分の行きたいところへと行く…
そんな風に、風のように自由に奔放に振る舞う彼を普賢は誰よりも大切に思っている…
そして普賢だけでなく皆もまた同じ様にそんな彼を大切に思っていたから、結果誰も彼には勝てない…
…最も彼に口で勝てるような者は僅かな例外的場合以外にしかいないのだが…
そしてその僅かな例外が、現在太公望の一番の理解者と自他共に認める、親友の普賢だった…
「多分…望ちゃんの事だから、またあそこでそのまま寝ちゃったんだろうなぁ…」
普賢はそう溜息混じりに呟いた…