…気になる少年にあった…
…汽車の中で会った少年…
…上品そうな顔をして…エグイイカサマを平然と使う少年…
…なんでだ…?…妙に気になる…
…そりゃあ…俺はロードとかと違って…人間が好きな方だけど…
…でも…ちょっと一緒にいただけの相手だ…
…なのに…
…『何が』こんなに気に掛かる…?…
ティキ・ミックの疑問―1―
「…ティキぽんv…ちょっと待って下さイv…」
千年公から受け取ったデリートリスト…
…それを持って行こうとした時…千年公に呼び止められた…
「…なんスか?千年公?」
「そのリストに載っている人物の中に一人ダケv…『殺す』際に注意して欲しい人物がいるのでスv」
呼び止められて振り返ると、千年公は右手の人差し指を立てて見せ、そう言った…
「…へ?誰です?それ?」
俺は驚いた、こんな注意はこれまで受けたことが無い。
この前殺したエクソシスト元帥の時だって…『教団』の連中へのメッセージを残せと言われたくらいで…特別には何も…
…だとしたら…よほど重要人物か…?…
…確かにこのリストに載っているのは…要人だって話だが…
…もしかして…また元帥クラスのヤツが混じってるのか?
そう思って聞いてみる…
…すると千年公は首を左右に振って…俺の疑問を否定し…
「…イイエ違いまスv確かにそのリストには元帥の名も載ってはいますガ、我輩がいま言いたいのはそいつではありませンv」
「…じゃあ誰です?…元帥より重要なんスか?」
「エエvとても重要ナ子供でスv」
千年公の言葉に疑問を持つ俺に、なんだか千年公はとても嬉しそうに言う…
…なんで…千年公こんなに嬉しそうなんだ…?…それに子供って…?…
…そう思っていると…
「わあ!千年公!それってもしかしてアレンのことー?」
…何故かロードまで嬉しそうな様子で言う…
…珍しいな…コイツが『人間』のことでこんなに嬉しそうにするなんて…
「そうですヨvロードvティキぽんにアレンの事を頼みたいのでスv」
「ええー!いいなー!ティッキー!ねぇ千年公?僕じゃダメなのー?僕アレンに会いたい!アレンと遊びたい!」
にっこり笑って言う千年公にロードが強請る。
…どうやら随分気に入ってるらしい…珍しい…
…だが…一体『何者』なんだ?…その『アレン』って言うのは…
…こんなにロードが拘るなんて…
「ダメでスvロード貴女にはこの宿題が終わったら、『方舟』の方を頼みたいんでスv…第一貴女この前も我輩に内緒でレロを連れてアレンに会いに行ったんでショウ?v」
…我輩があんなにダメだと言ったのニ…と付け足す様に千年公…
「…だってー!千年公ばっかアレンに会いに行ってズルイって思ったんだもん!」
…千年公が会いに行ったー!?…
…なんだそりゃ…そいつホントに何者?…
「…ロード…あれは偶然でスv別に我輩はわざわざ会いに行ったわけでは…」
…へー…偶然ねー…でもその時は殺さなかったのかー?
…でも…なんでだ?…シナリオに関係するのか?
「…じゃあ…三年前はー?…あれも偶然だって言うのー?」
「…あの時は…裏切り者とクロスにしてやられたのでスv…でもいまならクロスも傍にいなイv…丁度良いのでスv」
…三年前…裏切り者…クロス…そう言えばこのリストに名前が載っているのは…三年前に千年公が殺した裏切り者の関係者…
…おお!…確かによく見たら載ってるよ…クロス・マリアン…
…あー…どっかで聞いた名前だな…
…そうか…こいつ…エクソシスト元帥だわ…
…ん?あれ?…この名前…『アレン』…『アレン・ウォーカー』…
…えーと…他にはいないよな『アレン』ってヤツ…ってことは…
…フ〜ン…これがロードご執心の『アレン』かー…
……って…『ウォーカー?』…『アレン・ウォーカー』?…『ウォーカー』って確か…
「…千年公…ちょっといいスか?…」
「…なんですカ?vティキぽんv」
ロードと楽しそうに話す千年公に覚えた疑問を問うべく、片手を軽く上げて声を掛ける。
「…楽しそうなトコ悪いンスけど…その『アレン』って言うの…ここに書いている『アレン・ウォーカー』のことですか?」
「そうですヨvその『アレン・ウォーカー』でスv」
リストを見せて問う俺に、千年公が頷く。
「…千年公?何者なんスか?さっきから凄く気になってるんですけど?なんかやたらロードは拘ってるし…千年公もなんかあるみたいですし…それにクロスってエクソシスト元帥の名前でしょ?そいつが関係していて、しかも『ウォーカー』って…確かそれ裏切り者の名前でしたよね?」
「ええ?そうでスvその『ウォーカー』でスv『アレン・ウォーカー』はあの男の息子でクロスの弟子なのでスv」
「…は?…ちょっと待って…千年公…裏切り者とは言え、仮にもノアの息子が、エクソシストの弟子ってどういうことっスか?」
…あの…千年公…意味が…解りません…そう問うと…
「…正確には『養子』でスv…三年前…我輩はあの男への意趣返しも兼ねテ、アレンに『声』を掛けましタv『蘇らせてあげましょうカ?v』トv」
千年公が実に嬉しそうに言う…しかし千年公のその言葉に更に疑問がわく…
「…千年公?それって…アクマにしたってことっスよね?…じゃあなんで…」
…リストに載ってるんですか?
…そう聞こうとした俺の言葉を遮って…
「アクマにならなかったんだよね〜v千年公v…と言うか…する気なかったんだよね?」
…ロードが愉しげな声で笑って言う…
…って?なんだそりゃ?どういう意味だ?
「…ええ…確かに我輩は『あの時』アレンをアクマにする気はありませんでしタv『あの男』の『魂』を呼び戻したのはまったく別の理由で、それが必要だったからデ、その為にアレンの『喚び声』が『必要』だったかラ、そうしただけで、別に『皮』にするつもりはまったく無かったのでスv…なのに『あの男』は…なにを勘違いしたのか…まったく…『余計』な真似をして…どこまで我輩の邪魔をすれば気が済むのカ…挙げ句クロスなぞ呼んで、アレンを保護させたのでスv」
…もう少しだったのに…と千年公は悔しげに言う…
「千年公?どういうことっスか?」
…なんかよく意味が…
…解らないと問おうとすると…
…ロードがキャハハハと笑って…
「ティッキー!アレンはね?エクソシストなんだよ〜!それも『特別』なねvだから千年公はアレンを手元に置いておこうとしたんだけど…邪魔されちゃったんだーv裏切り者とクロスにねv」
「…そうなのでスv…ですからアレンを『殺す』にあたってハ…イロイロ注意しておく必要があるのでスv」
…はあ?そうすか?
…そう言い掛けて…またも疑問…
「…あれ?でも千年公?なんで手元に置こうとしたんですか?」
…それに…アクマにもする気がなかったって…
…どういう意味ですか?
…そう問うと…
「…それはですネ?『アレン・ウォーカー』の『イノセンス』が『特殊』な『モノ』だったからでスv『こちら側にあるのならば』我々にとっても非常に役に立つ『モノ』なのでスv…ですガ…いまのアレンがこちら側に来ることは有り得ませンvこのままアレンをヤツラの側に置いておく事は、我々にとって『百害有って一理無し』なのでスv」
…千年公が思わせ振りな口調でニィと笑って言う…
「…ハア…成る程…」
…つまりハートか…或いはそれに近いヤツか…ってとこか…
…エクソシストになる前の…なんにも知らない子供の頃なら…丸め込もうと思えば出来る…千年公の事だから『裏切り者』だけじゃなく『教団』のヤツラに対しても皮肉になるって思ったんだろうな…しかも色んな意味で利用価値があっただろうし…
…だが…それだけ重要なヤツなら確かに…あちら側に行かれたら邪魔者以外の何者でも無いな…
…おまけに『裏切り者』の『関係者』…『裏切り者』が『奏者』の『資格』をどっかの『誰か』に譲って…しかも『方舟』を狂わせていたことが解った以上…『裏切り者』の『関係者』は『全員』放ってはおけないってわけだから…
…なるほど…そりゃあ優先度も高くなるわけだ…
「…つまり…殺すのを優先しろと…」
「…そうですネv…早いに越したことは無いでショウv…ですが…注意して欲しいのはそれではありませンv…アレンが大陸にいる間に殺してくれればそれで良いでスv…気を付けて欲しいのは…順番でスv」
「…へ?順番?ってなんのですか?…」
そう思わず間抜けな声をだしてしまったら…
「キャハハハ!ティッキーマヌケー!」
そうロードに指差して笑われてしまった…
「ねぇ?千年公?やっぱ僕が行っちゃダメー?ティッキーに説明するの面倒でしょ?…第一もし間違えたらどうするのー?」
…大変だよー…そうロードが言う…
…何がどう大変なのか?まったく意味が解らない…
「ダメですヨv貴女はアレンに会いたいだけでショウv余計なことだけして殺さずに帰ってきそうだからダメでスv」
…この前がそうだったでショウ?vと念を押すように言われて…
…ロードがチェーと拗ねる…
「…それにさっきも言いましたガ、貴女には『方舟』の『ダウンロード』と言う『お仕事』がありまスv…取り敢えずはそちらを優先して貰わなくては困りまスv」
「……うー…わかったよー…」
…ロードがぶすくれる様に言う…
…そのロードにイイコですネv後でちゃんとご褒美をあげますヨvと千年公はにっこり笑って頭を撫で…
…そして改めて俺に視線を戻し…
「…デハv…ティキぽん話しの続きでスv」
…そう言った…
―続く―