―ゼフィーリアは特殊な国だった…

 …最初は其処は国でも何でもない…ただの何の変哲も無い、ろくに人も住んでいない辺鄙な処だった…

 …何もない…人気の無い田舎…その頃の魔族達のその地に関する認識はただそれだけだった…

 …唯一何かあると強いて言うならば…その地に出来うる限り立ち入るなと魔王に命令されていたぐらいで…

 …尤もあんな何もない処行っても詰まらないと、何故魔王様が気にするのか解らないと言うのが魔族達の考えだった…

 …しかしその認識が一変する事件が起こった…

 …それは神魔戦争の時…
 竜神が魔王を封じ…力尽きようとしていた我が身の終焉の地に其処を選んだに起因していた…
 …当時彼等は竜神がただの悪あがきで逃れようとして…偶然其処で力尽きたのだと考えた…
 …そうして彼等は竜神を追ってその地を訪れた…
 …そしてその中には魔王の腹心・冥王フィブリゾがいた…
 …彼は竜神の気配を追い、そして其処で一人の少女と出会う…

 …そうしてその出会いにより…その地は魔族達に最も危険で特殊な地と認識されるようになる…

 …尤も竜神がその地を最期に訪れたその理由も魔王がその地を気に掛けた理由も…

 …現在でも魔族達はその真相に気付いてはいない…
 

 
赤き存在(もの)達のローカス―8―


 『…カタートに連れて行きなさい…』
 リナさんの剣幕に圧される形で結界を張った、その直後に言われたその言葉…
 …その内容のあまりの意外さに僕は一瞬呆けて…
 「…何故ですか…」
 …ただ…それだけしか言えなかった…

 「…理由は言えないわ…でも…これ以上ここでは話せないのよ…」
 呆然とした様子で問うゼロスにそう答える…
 …言外に…(あんただってある程度は解ってるんじゃないの?)と言って…

 「…あんたはゼフィーリアに行けない、だからあたしの所に来た…ゼフィーリア出身の魔道士であるあたしなら知ってるかもしれないと思って…でもねゼロス…確かにあたしは知ってるけど…でもそれは簡単には教える事は出来ない内容なのよ…」
 「…では教えては頂けないのですか?」
 「…そうは言ってないわ…」
 「…?どう言うことです?」
 「…要はあんた達次第なのよ…」
 (…そう…どうなるかはあんた達次第…そして…あたしは確認しないといけない…あたしの…あたし達の………を……でも…どちらにしても……)

 …あたしの…リナ=インバースの旅は…もうこれでお終い…

 …だから…サヨナラ…ガウリイ…

 …そして…サヨナラ……………


                   ―赤き存在達のローカス―第1章・完―