「…リナ嬢…クロウリー…アレンのことで話がある…」
そう言ってブックマンはリナリーが休んでいるその部屋に入った…
悪夢―16―
「…えっ…?…それ…本当なの…ブックマン…」
「…本当なの…で…ある…か…?…」
…リナリーとクロウリーが驚きのあまり…目を見開く…
「…うむ…どうもアレンは…自己防衛反応の一環で何らかの『記憶』を失っており…それが最近になって…その『記憶』を揺さぶる様な『何か』があり…そのために…夢を見て魘される様になったようなのだ…しかも強力に忘れさせる意思が強い…その影響で…内容を思い出しうる危険を伴う出来事も忘れてしまう様だ…」
…その説明にリナリーとクロウリーは呆気に取られる…
…事実を全て話すわけにはいかない以上、こうとでも言わなければいかない…アレンの記憶の喪失に関しては…話さずに済ませる訳にもいかぬのだ…
…特に…リナリーは昨夜の当事者の一人なのだから…
「…昨夜のことも含めて…な…それに…今朝それに関連して少し話をしたら…突然倒れ…目覚めた時には…今朝起きてから以降のことも…自分が既に一度起きた事も覚えておらなんだ…」
「…そんな…アレンくん…」
…リナリーが震えながら…目に涙をためる…
「…私…アレンくんのところに…」
「…いまはまだ止した方が良い…心の整理をつけてから行くと良い…アレンにはリナ嬢が体調を崩しておると言っておる、アレン自身まともに動けそうになかったから…もう少し経ってから行けば安心するであろう…」
そう言ってひとまずリナリーを止める…動揺しているリナリーを、いまアレンに会わせるのは得策ではない…
「…ではリナ嬢…今日の所はゆっくり休まれよ…クロウリー引き続きリナ嬢を頼む…私は昨夜のことも含めて、室長殿に報告してくる…」
…そう言ってブックマンはその部屋を後にした…
―続く―