…ふらふらとしながらも…駆けずにはいられないのか…リナリーのいるその部屋に慌てて駆け込むアレンの背中を見送ってからラビは口を開いた…
「…なあジジイ…なにがあったか知ってるさー?」
アレンの後を追うように部屋に入ろうとしていたクロウリーが、ラビのその言葉に足を止め、ラビとブックマンを振り返る…
…クロウリーも気にはなっていたのだ…だから足が止まり思わず振り向いた…
そのクロウリーとラビ、二人の顔をそれぞれ見遣ってブックマンは口を開く…
「…私にもはっきりしたことは解らぬ…何しろ当事者の内、一人は先程まで意識を失い、もう一人はすっかり混乱しておったからな…」
「でも全然ってわけじゃないんさ?アレンから少しは何か聞いてんだろ」
「……アレン・ウォーカーが気が付いた時…何故かは解らぬが『左腕』のイノセンスが勝手に動いておったらしい…それでアレンは酷くは混乱し動揺しておる…」
「……これまで…僕の意思とは関係なく、勝手に『発動』したことが無かったわけじゃないんです…でも…それは総てアクマ絡みでした…今回みたいなことは一度も無かった…なのに…どうして…どうして…」
「…ざっと状況を説明した後…ウォーカーは最後に淡々とそう言い…そうして以後はずっと…『…どうして…』と呻き続けておった…二人が落ち着くまでは話は聞けまい」
…そうして…ブックマンは少し二人をそっとしておく様にと言った…
悪夢―3―
「……済みません…リナリー…済みません……」
…部屋に入ってきてから…アレンくんは…ずっと…俯いて…それだけを口にしていた…
「…済みません…済みません…」
…アレンくんのその言葉に…なんだか…酷く『痛み』を感じて…
…私は…胸が締め付けられそうになる…
…アレンくんの顔が見たいのに…
…何故か…彼は…俯いて…
…ただ…
「済みません」
…その言葉を…口にし続けていた…
―続く―