「…アレンくんを…起こそうと思ったの…」

 …酷く…魘されているアレンくんを見ているのが…辛かった…

 …とても…辛そうで…苦しそうで…見ていられなくて…

 …そして…無性に不安になった…

 …何かがとても恐くなった…

 …だから…起こさなきゃと思った…
 
 …それに…

 「…昼間…アレンくんが言ってた事が…気になったの…」

 「…時間が経って忘れちゃったのかな?」
 …アレンくんが言ったその言葉…
 「…だから…すぐに起こしたらなんの夢か分かるかもって…」
 …昼からずっとそう思っていたから…
 …だから起こそうと思って…夜中に起きて…アレンくんが魘され始めたのを見て…

 …魘されるアレンくんに…無性に不安が強くなって…

 …夢の内容が解れば…
 
 …それが分かれば…少しは…

 …この不安も消えてくれるかもしれないと思ったの…


 悪夢―5―


 「…それで起こそうとして…でも…アレンくんはなかなか起きなくて…そうこうする内に…突然…気が付いたら…何かに壁に押さえつけられていたの…それからずっと…アレンくんを呼び続けて…気が付いたら…ベッドで横になってて…ブックマンがいて…その後…ブックマンがアレンくんを呼んでくれたの…」
 「…今度は…僕が話します…」
 …リナリーが一通り話し終えると…アレンが悲痛な表情(かお)でそう言った…
 「…僕は…夢を見てました…ええ…みんなが言うとおり…多分魘されてもいたと思います…」
 …夢の内容は…はっきりとは…憶えていません…

 そう前置いて…アレンは語り始めた…

 …ただ…

 …酷く…怖くて…悲しくて…恐ろしくて…そして…寂しかった…のだけは…思い出せます…

 …でも…はっきりした内容は思いさせないんです…

 …それで…こんばん起きることが出来たのは…左目が疼いたからだったんです…

 …そしたらリナリーの声が…微かに聞こえて…
 
 …何か…奇妙な…違和感も感じて…

 …そしたら…

 「…イノセンスがリナ嬢を壁に貼り付けておったと…そう言う訳か…?」

 「…はい…」

 …最初は解らなかったんです…暗かったせいか…それがイノセンスだと…

 …何が起こっているのか…全然…解らなかった…

 …でも…

 「…でも…正直…いまも解らないんです!…どうして…どうして僕のイノセンスが…なんでっ!」
 
 …なんでこんなことになったのかっ!!

 …どこか虚ろな様子で淡々と語っていたアレンは…しかし最後にそう叫んで泣いた…

                                            ―続く―