…そして翌朝…異常はより明確に顕れる…
「アレンどうさ?やっぱりコムイに連絡するさ?」
昨夜の不安そうなアレンの様子が、気になっていたラビは、朝起きてきたアレンにそう問うた…
「…え?…どうかしたんですか?ラビ?あっ!まさかリナリーに何かあったんですか!?」
…キョトンとした様子でそう言って…それから…コムイの名が出たからか…リナリーの身に何かあったのかと『本気』で心配して言っている…
…昨夜の事を…まるで知らないかの様に…
…そんなバカなと…そう思いながらも…
「…ア…アレン?…お前…なに言ってるさ?…まさか…昨夜の事…」
…覚えて…ないさ…?…
…最後は…言葉にならなかった…
…だが…答えはすぐに返された…
「?昨夜?昨夜なにかあったんですか?」
…じょ…じょうだん…さ…?…
悪夢―7―
「ジジイ!大変さ!大変さ!ジジイ!」
ラビはアレンの腕を引っ張って、ブックマンの所に向かった。
「どうした、騒がしいぞラビ!ブックマンたるものいついかなる時も…」
「説教は後さジジイ!そんなことより、アレンが大変さ!」
ラビはブックマンの言葉を遮って言った…後で余計説教されそうな可能性もあったが…大体の内容の予想はついている…もう大概何度も同じように説教されているのだ…そんな何度も聞いた説教の内容などより…いまはアレンの事の方が余程重要だった…
「そんなこととはなんだ、そんなこととは!…しかし…アレンが大変とはどういうことだ?」
…やはり予想通りブックマンは不満の声を上げる…しかしラビの様子にどうも重要な事らしいと察し説教はせず、話の先を促す…
「…そうですよ…ラビ…僕はなんとも…」
すると今度はラビに引っ張られてきたアレンが不思議そうな様子でそう言う…
…確かにアレンはいつも通りに見える…
…昨夜の事を考えると…不思議なくらい…否…むしろ異常なくらいに…
「…アレン…?…」
ブックマンは…そのアレンの様子に異常を感じ取り…目を見開く…
「…ジジイ…アレン…昨夜の事を…覚えてないんさ…」
ラビは正直…自分でも信じがたい気持ちでそう言った…
「…なんだと…」
…流石のブックマンもその言葉には愕然としたが…
…それも一瞬のことで…すぐに平静を取り戻し…
「…成る程…」
…と頷き…
「…それならばアレンのこの様子も納得がいく」
そう言って納得し…
「…しかし…こうなってはやはり…コムイに連絡した方が良いな…駅に電話があっただろう…行ってくる…先に食事をしておれ…時間が掛かるかも知れぬからな…」
…そう言い…そしてラビを捕まえ…
「…ラビ…電話が終わるまでアレンとリナ嬢をこの宿に足止めしておれ」
…耳元で小声で言った…
「…へ?…なんでさパンダ?…もしかしてそんなにやばい内容なんさ?」
…ブックマンの言葉にラビも小声で返す…
「…昨夜の時点ならば兎も角…この様なことになってはな…しかもアレンは覚えておらぬと言う…ならば余計な精神的負担は掛けぬ方が良い…何が原因か解らぬいまはな…兎も角総てはコムイと話してからだ…解ったら行け…リナ嬢にも余計なことは言わぬのだぞ!」
…それだけ言うとブックマンは、今度こそ駅に向かって歩いて行った…
「…ラビ、ブックマンの話しなんだったんですか?」
「…あー…説教さ…説教…まったくジジイはクドくていけねぇさ…」
…そんな…アレンとラビの会話を背中で聞きながら…
―続く―