…嫌な夢を見た…
 …兄様がいなくなる夢…

 ―碧の行く末― 〜3〜

 目の前で…黙々と旅支度を調えているのは大好きな兄…
 「…兄様?何処かに行くの?」
 私は何がどうしたのか判らなくて、そう問い掛けた…
 
 「…妹々…御免…僕はどうしても行かないといけないんだ…」
 「兄様…何処かに行くの?」
 「うん…妹々…元気でね…喩え何処にいても…僕はいつまでも君たちの事を思っているよ…」
 そう言って彼は優しく笑う…そして…姿を消すのだ…いつも…
 
 …本当はわかってる…これはいつもの夢…
 …これは…
 …ここにいるのは…いまの私じゃないし…
 兄様はいない…

 …何処かに行ってしまった…
 …あれは…もう…ずっと…むかし…
 
                   ―終わり―