半身10―伏羲―『プロローグ0』

 …あれから何万年もの時が過ぎた…
 …ヒトが現れ仙道が現れ…もはや我らの血は完全にこの地と一体となった…
 …我らが子等は文明を築いた…平和な穏やかな世界…可能性に満ちた…我らの新たなる故郷…
 突如それは滅んだ…
 総てのものが失われたその地を、我は亜空間から見る…
 「伏羲、貴男の言った通りになってしまった…」
 「計画を実行に移すのか?」
 「女カをそなたが殺すのか…」
 器はこの地と融合し、普段はこの地と共にあるが故に、この地そのものを器としているが故に、この亜空間では魂魄体のみの彼等が口々に言う…
 「…いずれ…その時が来るであろう…」
 
 この地の生命体をベースとした、我のこの新たなる器…この器では我本来の力は出せぬが其れで良い…この地の為には…だが女カとの戦いには…
 あれが本来の力を取り戻せば…今のままでは勝てぬ…だがそのための策は既にある…
 太極図のカスタマイズも終了している…後はこれらの宝貝を再び地上に戻し、時を待とう…
 …悠久の時が過ぎた…女カが壊せば壊すほどこの地は我らの故郷に近くなる…
 …だが女カよ…そなたの求めるモノは…失われたモノは…例えこの地がどれほど我らの星に近くなろうと…同じモノにはなり得ぬのだ…
 
 …時は来た…再び大地に降り立とう…女カ…そなたを止めるために…
 
 《……老君…太上老君…》
 《……あなたは誰…どうして私を起こそうとするの……》
 地上に降り立って、我はまずこの地で最も力ある仙人を訪れた…
 太極図を持ち、夢に関する能力(ちから)も、ある程度なりと持つ彼の協力は我が計画には不可欠なのだから…
 「私の名は王奕、そなたに協力を請いたい」
 《…この地を歴史の道標から解放するために》
 《……歴史の道標?……》
 《…そなたは薄々なりと感じている筈…そなたが夢見し滅びの歴史は女カが造りしもの…そなたは予知夢を見たのではない…女カの夢を垣間見たのだ》
 《あなたは誰…どうしてそんな事まで知っているの…》
 《…我が名は伏羲、女カの身勝手をくい止めるために一人残った最後の始祖…》
 太上老君の夢に必要な情報を送る…
 《…分かっているんでしょうあなたには、どう足掻いても結果は同じ…歴史の道標がいてもいなくても…》
 《未来は決まってはいない…可能性は無限にあるのだから…》
 《……………》
 《世界は生成流転し陰陽は常に変化する…遠い未来の事にまで責任を持たずとも良いし、未来を救う必要もない、歴史の果てを見る必要はない…》
 《…ただ…正しく使った世界を後の人々に委ねればよいのだ…》
 《………》
 《…答えはその時でよい…取り敢えず今は…我はただこの地にて時を待つのみ…》
 ―あとがき―今回は伏羲(王奕)と老子の出会いを書いてみました。
 …ごめんなさい、本編からネタが外れました(一応続きなんだけど)しかも暫く戻りそうにないし…今回前半が『半身』の続編部分にあたります……