半身3―太公望―『邂逅2(闇の鏡2)』
王天君の口から封神計画の真相が語られようとしている。
「黒幕はあのクソジジィよ」
別れ際の、王天君について話した時の原始天尊様のあの沈黙の理由(わけ)が、いま王天君自身によって語られようとしていた……
「例えば金鰲島への侵入の時を思い出してみろ、オレは楊ゼンを中に入れてやりバリアを解除させてやった、楊ゼンの大ダメージと引き替えにな」
「十天君との戦いでもそうだ、オレがやつらを分断させたおかげであんたらは勝てた」
「――そして聞仲との戦い…最も効果的な黄飛虎を使って聞仲を心理的に追い詰めてやった」
「さらに周を興すときも黄天化の命を使って丸くおさめてやったんだぜ」
王天君が淡々と語る……
では、おぬしのあの行動は全て封神計画のためだったと言うのか……
ではわしとの関わりは…この予感の正体は封神計画にあるということか……
疑問がますます強くなる……そして、この不可解な予感も……
「――実はこれらの方法はあんたも考えていたはずだ『善悪を考えなければ有効な方法だ』……とな」
「だがあんたはいいヒトだからそれができなかった」
王天君が確信を持って言う。
「何が言いたい!?」
わしには王天君が何を言おうとしているのか解らない……
「オレは――――」
空間に波紋を作って王天君がその手をこちら側に伸べてくる……
「あんたが本当にやりたかった事をやっていたのさ」
そう言って、その手でわしの頭巾を取った……
何のつもりかと思っていると、次に王天君は自身の帽子も取った……
王天君が帽子を取った瞬間、わしは目を見張った。
帽子を取った王天君のその顔…それはわしの…
異なる部分は山ほどあるだろうに、その顔は…それでも…このわし自身を思わせるものだったのだ……
「オレはあんたの心の闇を映す鏡ってとこだ」
「そしてあんたはオレの心の光を映す鏡……」
「な…何を言っておる!い…意味がわからぬ!」
わしには常の余裕は既になかった……
「おぬしの言いようを聞いておるとまるで…まるで…」
言葉は徐々に小さくなり、わしはそれ以上を言えない……
「――――かって…」
そんなわしの様子に構わず、否後押しをするように王天君が語り始める……
「オレは王奕という人間だった、その王奕には魂魄を分割できるという極めて特異な性質があったらしい」
「ある時それを知った師の原始天尊はそいつの魂魄を2つに割り…その1つを金鰲島に引き渡した」
「金鰲島でそいつはさらに3つに分割され妖怪をベースにした体に入れて王天君と名づけられたわけだ」
なぜこやつはこのような事をわしに話すのか……わしは何も言えずに、ただその話を聞いていた……
「そして崑崙山に残ったオレの半身は…」
何を…こやつは何を言おうとしているのか…
「ククク……もぉわかってんだろ?」
コチッ―時計の音がふいに耳に入った、刹那の沈黙がそれをもたらしたのか……
「オレとあんたは同一人物なんだよ」
―つづく―

