半身4―太公望―『邂逅3(闇の鏡3)』
その瞬間(とき)……大時計が正午を告げた……
「オレとあんたは同一人物なんだよ」
わしの思考は凍りついていた……
「オレは探した、もう一人のオレをな」
わしは言葉を挟めなかった……
「クソじじいに切り捨てられ……妲己に心を壊されてもなお……」
「オレはオメーを探し続けていたのさ」
「最初は誰がそうなのかわからなかったぜ崑崙山の中の誰かだとはわかっちゃいたがな」
「もしかしたら素性の知れねぇナタクか雷震子がそうかとも思ったが…あんな下品なやつらがオレの半身なわきゃねぇ」
「殺されるぞおぬし…」
そこでようやく、わしは口を挟めた。
「だが わしがそうだという証拠はあるまい!!」
「あるぜ!」
強い口調で言うわしに、王天君があさっりと答える……
「魂がそう言っている!オメーの魂はどうよ?」
…ではあの予感の正体は……
「うそを…うそをつくな!!!」
机を叩き、叫ぶ……
…原始天尊様のあの沈黙は……
「では武成王も天化も十二仙もわしが殺したというのか!?」
語気を荒げる……
「わしはそんな事はせぬ!!わしは…」
わしは否定した…なのに…何故…
…言葉に力が入らぬのか…声が小さくなるのか…
「………わしは……」
…わしは否定しきれぬのか…魂の……
「――そうさオレ達が殺したのさ!!あんたは司令官という形をとりオレは敵という形をとってな!!!」
王天君の言葉をわしは否定できず……
その場を占める暫しの沈黙……
…魂の呼応は強くなるばかりで……
わしは俯いている……王天君を直視できないでいる……
……否定しなければ…そう考えれば…これまでの総ての事が、まるでパズルのように合わさって……
カリッ―王天君が爪を囓る―
「…だがもうオレは疲れたよ…王天君でいる事に疲れた…」
こやつが何を言うつもりなのか、おおよそは知れた……
「王奕に戻ろうぜ」
「いやだ!!」
こやつの言いたい事は解った…だが、それでもわしは太公望なのだ……
たとえわしがこやつと同一人物であったとしても……
たとえ王奕(それ)が真実(ほんとう)であっても……
「ククク……そう言うと思ったよ…」
王天君がそう言って溜息を吐く……
「――だが忘れてねぇか?今のあんたにゃ肉体がねぇんだぜ?」
そんなことは解っておった……
「オレと融合してまだ生きるか、それとも封神台に行くか選択の時だな」
…選択の余地は…
…だが…わしは抗えるだけ、抗いたい…
―つづく―

