半身5―太公望―『邂逅4(闇の鏡4)』

 「さぁどぉするよ太公望?」
 わしは足掻くだけ、足掻きたい……
 「……………確かにわしが生き延びる術はおぬしとの融合しかあるまい」
 「だが!」
 わしは顔を上げる……
 「だが?」
 王天君が鸚鵡替えしに問う……
 「なんかおぬしと融合するっちゅーのが気色悪いっちゅーかなんちゅーか!」
 いつものペースで戯けて答える。
 「好き嫌いを言ってる立場じゃねーんじゃねーのか?」
 王天君がつっこみを入れてくる。
 「まぁ待て王天君!」
 わしは手を振ってまじめに答える事にする。
 「わしとてこれまでのわしに愛着を持っておる、おぬしと融合して違うモノになるって事をそう簡単には決めかねるよ!」
 (父上と母上にいい感じで育てられた わし)
 (一族を失い孤独となった わし)
 (仙人界に入り道士として修行を始めた思いでとか…)
 (封神計画を一任された時の『してやったり!』という感覚…)
 (味方を得そして…失った記憶…)
 「わしとてわしなりにわしとしてやってきたのだ、それをホイホイと捨てられようか?」
 脳裏をこれまでの事がまるで走馬燈のように駆けめぐる…
 「捨てるんじゃねぇ、さらに進化すると考えな!オレと融合してあんたに損はねぇはずだぜ!!」
 王天君はドンドンわしの逃げ道を潰していく……
 「しかも あんたは人間が大好きだから『仙道のいねぇ人間界』を造りてぇときてる、だったらシのゴの言わず理想のためにオレと一つになり生きたらどうよ?」
 …もはや足掻くこともできぬ…
 「――分かっておる……答えは最初から出ておる、というか答えなど一つしかないのだ」
 …逃げることは…目を背ける事は…出来ぬのだ…それが真実なのだから…
 「融合しよう王天君!!」
 王天君が満足そうな表情(かお)をする……
 「言っておくが……融合後のオレ達がどんなモノなのかは想像もつかねぇ」
 王天君が言いながら手を差し出してくる……
 「まぁ、あんたの清らかさとオレのステキさが一つの肉体に同居する事にはなるんだろうな」
 そう言う王天君にわしも手を出す……
 「ここまで不幸かわしの人生…」
 溜息混じりに言う……
 「まぁよい!体がないと何もできんわ!!ゆくぞ王天君!!!」
 そうしてわしと王天君は空間越しに手を合わせ……
 その瞬間(とき)、合わせた手から光が溢れた……
 
 ―あとがき―ようやく太公望篇のWJ=鏡1・2・3のネタが終わりました、と言ってもまだ王天君篇が残ってますが、こちらは少し違った内容になると思います……