半身6―王天君―『邂逅5(光の鏡1)』

 楊ゼン=オレと同じ捨てられた子供、その筈だったのにあいつは崑崙で大切にされた!
 通天教主=楊ゼンを守るために人質交換を言い出して、オレを守るためと言って閉じ込めた奴!
 聞仲=オレと同じ人間のクセに金鰲で大切にされた奴!
 原始天尊=オレの魂魄を分裂させて金鰲に引き渡し、オレを見捨ててオレの代わりを見つけた奴!
 そして太公望=原始天尊の一番弟子、オレの代わりに原始に可愛がられている奴!
 憎い奴ら…壊してやる・苦しめてやる・嫌がらせしてやる・邪魔してやる・奪ってやる・殺してやる…復讐…
 そのためにオレは生きている…ずっとそう思っていた…
 だが…心の奥底ではいつも気になっていた…オレの半身…
 金鰲で妲己に心を壊されて、さらに3つに分けられ妖怪の体に入れられても…
 自分の体を犠牲に、復讐を一つ終える毎に積もっていくもの…
 太公望…あいつと会った時から感じていた奇妙な感覚…
 始めはあいつへの憎しみだと思った…
 だがそれは他の奴らへのモノとは少し違う様に思った…
 そしてあいつが絡めば絡む程強くなるその感覚…
 だがその答えはもうすぐ出る…あいつへの復讐…
 まずは軽い嫌がらせをしてやる…妲己の望みも無視できねぇからな…
 簡単には周王朝をつくらせてやらねぇ!!
 黄天化の足止めをしようとする太公望から黄天化をかっさらってその命を使って事が丸く収まるようにしてやる…
 …思った通りだ、太公望の奴は随分と悔しそうな顔してやがった…
 だが…なんだ…この感覚は…他の奴らの時とは違う…
 禁城に歓声が沸く…殷周革命が終わった…
 …蓬莱島に太公望達が攻めてくる…
 総て妲己の思惑通りに進んでいる…
 だが…不意に気になった事がある…太公望の様子…
 これまでの事であいつがオレと張る頭脳の持ち主だということは分かっている、聞仲の奴は正反対だと言ってやがったが… 
 考えてみればあいつに関してはおかしな事だらけだ…
 …崑崙開山以来の頭脳の持ち主…三十年たらずで仙人級…スーパー宝貝…原始天尊の一番弟子…
 …何かが引っ掛かってやがる…
 それにあいつの顔…知っているような…誰かに似ているような…
 …妙にあいつが気になる…あいつに惹かれる…そう何か懐かしいような…
 あいつは違う…他の奴らとは…
 …オレと同じだけの能力(ちから)を持ち…オレとは正反対の性質を持つ…まるで鏡に映したように…
 …鏡!?…そう鏡だ!…あいつはオレの鏡…
 あいつこそがオレの真実(ほんとう)に求めていたモノ…
 …オレがずっと探し続けていたモノ…
 …オレの半身だったんだ…
      ―つづく