―ドクンドクンと心臓の鼓動が煩い…

 ―ズキンズキンと頭が痛む…

 …体が…頭が…左腕が…灼けるように…熱い…

 …『コレ』は一体…なんなんだ…?…


 ―ハティの訪れ―
           ―2―
 


 「…アニス…マナ…」
 頭がズキズキと痛む…

 …アニスを失って…僕の『世界』は変わった…
 …『世界』が…酷くおぞましい…
 …なんでだ…?…
 そうやって考えに沈んでいた僕の目に…不意に大きな人影が入り…
 僕は…のろりと…顔を上げる…
 すると其処には…見知った異形…

 …千年伯爵…エクソシストの…敵…

 …でも…いまの僕には…不思議と敵意は湧いてこない…
 …きっと…いま僕は…なにもかもが…どうでも良くなっているんだ…
 そんなことを考えながら伯爵を僕はただボーっと見つめる…
 そんな僕の様子が意外だったのだろう…伯爵が僅かに目を瞠る…

 …まあでも…きっと僕は殺されるんだろうな…と考え…
 …それはそれでいいかと…口元に自嘲の笑みを浮かべた時…僕は伯爵の顔を見て瞠目する。
 「…これハvこれハv驚きましタv」
 …意外にも…伯爵はにっこりととても友好的な笑みを浮かべたのだ…

 「…千年…伯爵…」
 …どうして…?…どうして…僕に笑いかけるの…?…
 …どうして僕は…その笑みに…心が温かくなるの…?…

 アニスを失って…凍てついた心に…微かに…温もりが戻った…

                                            ―続く―