アニスを失って…凍てついた心に…微かに…温もりが戻った…

 …でも…なんでだ…?…
 …なんで…?…
 
 たとえいまの僕が伯爵と戦う気力を失っているとしても…
 それでも伯爵がこれまでしたことを忘れたわけじゃないし…それに…『敵』であることに変わりはない…
 …なのに…何故…?… 

 …何故僕は…伯爵の笑みに…心が温かくなる?


 ―ハティの訪れ―
           ―3―


 …なにがなんだか解らない…
 「どうして?」「どうして?」
 頭の中はそればかり…

 …そうやって混乱していると…伯爵の口から…不意に…『ある言葉』が零れた…
 「…『時の破壊者』…v…」
 「…えっ…どうして…伯爵がそれを…」
 『時の破壊者』それは…教団に入団した時にヘブラスカに言われた言葉…
 …教団の人間しか知らない筈の…『言葉』…
 …『それ』を何故『敵』である筈の伯爵が知っているのか…

 僕の頭は…先程以上に混乱していた…

                                            ―続く―