「元帥が言うにはアレンがまだ父親と一緒に大道芸人をしていた頃に、大道芸をして見せて欲しいって言う口実で伯爵に誘き寄せられたんだって…」
―オレが元帥から聞いたその話の内容に…ジジイが伯爵の名を呟いて黙り込む…
―『ハート』の『鍵』―
―5―
「…しかし何故それをマリアンが…?…」
ティエドール元帥のその疑問は当然だ…
…オレだって聞いたモンな…「どうして元帥に手紙を…?…」って…
…まあ…オレはクロス元帥が『なんて答えるのか』に『興味』があったんさけど…
「…アレンの養父は実はクロス元帥のサポーターだったって…元帥が…それで伯爵の事も知ってたけど…アクマ共に周りを固められてた所為で断れなかったらしくて…仕方なく隙を見て元帥に手紙を出してそのことを報せたらしいさ…」
それは元帥から聞いたこと…
…だが元帥は『すべて』を話してはいない…
…元帥はアレンの父親がノアだという事を話さずに『説明』した…意図的に…
「…それでアレンのことで解った大変な事とは?…あの小僧については解らぬことが多すぎる…アクマ共が退いた理由をラビ、お前はあの小僧にあると言うたがな…実はアクマ共は退く時にまったく違うことを口にしておるのだ」
黙り込んで何かを考えていたジジイがそう口を開く…
「…違うこと…?…それって…」
そしてジジイが言った言葉に…オレは…「えっ?」とっ思う…
「…アクマ共は…『ノアの王子』が伯爵の下に戻った…その祝いにいまは見逃すそう言ったのだ」
…なんっ…だっ…て…
―『ノアの王子』
オレは…ジジイのその言葉に瞠目し…
「!『ノアの王子』だって!」
叫ぶ…
―『ノアの王子』…
…それは…『イノセンスのハート』を破壊する存在(もの)…
…そして…アレンは…
…アレンのイノセンスは…
―『ハートの鍵』…
―ギリッ…
事態の深刻さに…オレは奥歯を噛み締める…
そんなオレに…
「そうだあの『ノアの王子』だ」
ジジイが重々しく頷いた…
―続く―